「いってらっしゃい。がんばるのよ」
「気をつけてな。休みには帰ってこいよ」
「はい。では行ってまいります」
あれから五年がすぎた。結局疑問は残ったままだ。
歳も10になった私は忍術学園というところに入学するらしい。
この両親は以前忍者に助けられてから好意をもったらしく、
その忍者に「あなたみたいな忍者に息子もなれますかね!?」
と聞いたらしく、その忍者は「あぁ。忍術学園に通えばの」と、
いったらしいのだ。そんな情報を知った両親は私の意見も聞かず
勝手に入学を決めていたのだった。
そして今、旅立つというわけだ。
こちらを見て幸せに微笑む両親を見て、私は今まで何度も恨んだことがあった。
なぜ、幸せなんだ。なぜ、平和なんだ。
私も誠とあんな風に幸せになりたかった、と。
しかしそれも誠のいない今ではもう無理だと気付いたのか、
恨むことも自然になくなりむしろこんな表情のかたい子供を、
育ててくれてありがとうと感謝するようになった。
「それじゃあ、いこうかの」
今では見慣れた木造の家をでる。
私がいたところに木造なんてありえなかった。
それに世界のすべてが戦場だったがゆえにこんな木が生い茂り、
村や町があるなんて考えられなかったのだ。電気がない不便な生活だったが、
今では日常の生活で必要なことはできるようになった。
石で火をつけるのは難しかったが、今ではいい思い出だ。
今声をかけたのは先ほど話した両親を助けた忍者さん。
友人のような関係で情報を交換しあってるんだとか。
名を大川平次渦正さんというらしい。
「はい」
新しい運命のはじまりかもしれない。
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