「・・・木瀬考誠君はいますか」
私は出会う決心をした。
三年い組の中へ話しかけてみる。
時葉零がでてきた。
「委員会中ですよ?伝言なら私が伝えますが・・・」
「いや、直接会う。来たら私の部屋に行くよう言ってくれないか?」
「わかりました」
ここは先輩権限を使用。
誰にも話を聞かれたくない。
「三年い組の木瀬考誠です。失礼します」
礼儀正しく入ってくる姿。
何年も待ち間近でみる姿は何も変わりがなかった。
「鷲野龍之介先輩・・・ですよね?
御用は何でしょうか」
「私がわからない?」
「?初対面、ですよね」
やっぱりわからない。
なるべく声をまねてみる。
「気付いて、誠」
「・・・・‐‐?」
能が聞きとらないのは
私がもうその頃の自分を忘れているからだろうか?
「大好き、愛してる。
でも、男になってしまった」
「俺は・・・お前に会えただけで嬉しい」
そう言って一周り小さい誠が抱きしめてくれる。
しばらく見せることのなかった涙が
頬を伝い誠の肩へ。
誠が静かに流す涙が
頬を伝い私の肩へ。
「男だろうと、俺は愛し続けてやる。
今まで気付けなくてすまない。
もう泣いていいよ。"愛してる"」
最後の言葉は私の心へ浸透し波紋のように広がる。
止まらない、止まらない。
今日中、私と誠が泣きやむことはないのだろう。
二つの小さい嗚咽はピッタリと重なり合う。
← →