「なんでわかったのですか?先輩」


そう問いかける目の前にいる子。目は猟奇的。
いつもの愛らしい顔は何処やら。
真夜中に訪ねてきたと思ったらなぜそんな顔をしているのかは
私にはわからないが質問の内容からして
私がばらすのを危惧しているのだろう。


「・・どこからどうみたって君は女の子。
鉢屋先輩にもバレていそうだけど?時葉」


「そんなにも私は女ですか?」


「どこから見たって。体の線は細いし
体つきは丸い。声もみんなに比べたら高い。
皆が声変わりしたときにすぐバレる。
どれだけ男装したってわかる人にはわかってしまう。
男が女装したっておなじことだ」


こっちに来てからこんなに長ったらしい言葉は
久しぶりだな。時葉は確かに優秀だしプロ忍に近い。
でも、いくら男装しても女であることに変わりはないのだ。
時葉零と同じように、いや時葉零はただ隠しているだけだが、
女になりたくても女にはなれない。
どうしようもない"事実"だ。


「誰にもばらしはしない。だから時葉が
それでいいならそれでいればいい」


「それは本当ですね?私はここで男として生きていかないと
いけないのですから」


「少し野暮だが聞かせて。何故?」


「・・・・・親に、一族に、みんなに、
認めてもらいたいから。私の存在理由を」


存在理由。今までにそんなこと考えたこともなかったな。
そんなことを口にする必要もなかったし。


「女だから弱いから認めてもらえない。生きることを許されない。
だから男になる、強くなって認めてもらうために!。
だから人を殺して、認めてもらおうとした。
そんな時に父様から忍術学園で六年間ばれずに男として生きたら
認めてやると言われたのに・・・」


そんなに認めてもらいたいのだろうか?
確かに誠に認めてもらいたい気持ちと重ねると
一致する感情もある。が、私にはわからない。わかる気がないと
いったらそうかもしらないが。しかしそんなに辛いのなら


「逃げればいいのに・・・」


口に出してしまった。時葉零が驚いてみている。


「辛いなら逃げればいい。いつか誰か認めてくれる、
なんて思い逃げればいい。ただの一時しのぎではあるが」


私だって逃げている。誠から。いつかは認めてもらえるだなんて
現実逃避を繰り返し行い逃げる。
いつかは逃げ場がなくなるかもしれない。
そうしたら対峙して、認められなかったら死んだっていい。
ただの逃げただけの人生かもしれないが、逃げている時に
温かみには必ず触れられる。
私が喜八郎や滝夜叉丸、三木エ門と出会えたように。
時葉零だって同じだろう?


誠の名を伏せ、そんな風に言ってやる。


「・・・・・」


時葉零は涙を流し始めた。
これじゃあまるで泣かせたみたいじゃないか。


「どうするかは時葉次第。
女だってことは誰にも言わない。じゃあね、おやすみ」


すこし冷たくなったが帰ってもらう。
これ以上自分のことを話したくないし
時葉零に踏み込みたくはない。
自分は逃げているのだ。余計な接触はさけないと
追いかけられてしまう。誠が追いかけるかなんて知らないけれど。

















何年ぶりだろう。涙がでた。


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