僕の知らない君のこと




ご褒美はまだですか、ご褒美はまだですか。三上に言い続けて一週間経過したが未だ彼が動く気配はない。
もしかしてこのままなかったことにされるのだろうか。
彼が望むならばご褒美があろうがなかろうが全力で応えようと努力する。なら何故しつこく迫っているかと言えば一度した約束は守ってもらいたいなんて殊勝な理由ではなく、ただ単に見たいだけだ。
つい数年前まで着ていたのだし、なにもバニーガールやメイド服を所望しているのではないのだからぱぱっと叶えてくれてもいいと思うのだが。
自分が似たようなお願いをされたらセーラー服でも着るし、ランドセルでも背負ってやる。どんな特殊な性癖にも応える自信があるので、出し渋る意味がわからない。
嫌なら無理には、なんて慎ましい性格はしていないので、顔を会わせるたびにしつこく言い続け、漸く金曜日の放課後三上と共に電車に乗った。
制服は実家で保存しているので取りに帰らなければいけないというので、それなら一緒に行くと言ったのだ。
嫌だ。一人で行くと散々駄々を捏ねていたが引っ付いて離れないので諦めたらしい。
送ってもらったらどうかとも言ったが、どういう理由で学ラン送れと言えばいいのだと逆に問われ、それは確かにと頷いた。
電車内での三上は不機嫌そのもので、ポータブル音楽プレイヤーにイヤホンをさすと一切口を効いてくれなかったが些末な出来事なので気にしない。
それよりも三上が生まれ育った家に入れると思うと胸が躍って躍ってしょうがない。
一度、こっぴどく振られたとき近所まで行ったことはあるが、家の外観すら見たことがないし、ましてや入ったこともない。どんなお家かな。アパートかな、一軒家かな。想像するだけで楽しかった。
乗り換えをしながら一時間ほど電車に揺られ、有名なお寺の名前を冠した駅で降りる。
足早に歩く三上の背中を追いながら、きょろきょろと周辺を見ながら歩いた。
大きな寺があるため緑も多く、高い建物も少ない。低層住宅が並ぶ街並みは自分の地元と近いものを感じ、勝手に親近感を持つ。
静かで、たまに子どもの笑い声がする。ランドセルを背負う小学生とすれ違い、三上もあんな風に登下校していたのかな、と想像すると自然と笑みが零れた。
よそ見をして歩いていたので立ち止まった三上に正面から突っ込み、思い切り睨まれた。

「ご、ごめんなさい…」

返事はなく、立派な数寄屋門を抜ける背中をぼんやり眺めた。
久しぶりに帰ったから家を間違えたということはないだろうか。彼の背中と門扉に掲げられた表札を見比べ、確かに三上と書かれていることを確認する。

「なにしてんだよ」

「…あ、いや、立派なお家だからびっくりして…」

「ただ古いだけ」

瓦屋根に漆喰の壁、黒檀色の柱を眺め、ほえーと馬鹿みたいな声を出した。
三上は引き戸の玄関を開け、さっさと中に入ったので慌ててお邪魔しますと小さく呟きながら玄関に入った。
上り框にしゃがんで靴を揃えると、ぱたぱたと可愛らしい足音が聞こえた。

「…陽ちゃん?お母さん陽ちゃんが帰ってきたー!」

三上の背中に隠れるようにしていた身体をずらし、妹さんに小さく頭を下げた。双子なのでどちらがどちらかはわからない。

「…誰?」

「あ、えっと、泉真琴といいます…」

「陽ちゃんの友だち?」

「えーっと、はい…」

「へー」

下から上まで値踏みするように見られ、興味なしと判断されたのか妹さんは三上の腕に抱きついて歩き出した。

「なんで柴田さん連れてこないの?」

「一生連れてこない」

「なんでよー」

ぽつんと取り残され、自分はどうしたらと一瞬悩んだが、茶の間に向かった三上を追った。ひょっこりと扉から顔を出すと三上の母親と目が合った。

「あら、お友達も一緒なのね」

「お、お邪魔します」

しっかりと腰を折って頭を下げる。

「ゆっくりしていってね」

ふんわり微笑まれぎこちない笑みを返した。
そういえば学以外に友人がいなかったので他人の家に入ったのは初めてだ。幼稚園や小学生で済ませている当然の行為を高校生になってやっと初体験かと思うと情けなくなる。

「部屋行くから」

「はいはい。急に帰って来るから夕飯適当よ?」

「いいよ」

「帰るときは連絡ちょうだいって言ってるのに。そういうところ本当にお父さんとそっくりで嫌になる」

「あー、はいはい」

適当にかわした三上に腕を引かれたので、もう一度妹さんとお母さんに頭を下げた。
妹さんはもう行くのかと名残惜しそうにしていたでの可哀想だが、三上的にはさっさと用事を済ませて帰りたいのだろう。
急勾配の階段を上り、突き当りの部屋が三上の自室らしい。
室中はベッドやこたつテーブルなど必要最低限の物が並んでおり、飾り気のない部屋だった。無頓着な三上らしい。
ベッドに腰掛けると三上は押入れを開け、衣装ケースを引っ張り出した。

「どこにしまってんだ」

二個も三個も引っ張っても目的の物は見つからず、苛立ちで髪を掻きながら部屋を出て行った。
数分後、クリーニングの袋に入った学ランを持ち戻ってきたときには眉間に皺が寄っていた。

「わあ」

真っ黒な学ランはよく見るタイプで別段珍しくはないが、これを三年間着ていたのかと思うとごくりと喉が鳴った。
匂いを嗅いで胸にぎゅっと抱いたままごろごろ転がりたい衝動を抑えるために胸の辺りのシャツを鷲掴みにする。

「目が怖えんだよ」

「だって、だって、お宝じゃん…」

「ただの制服だろ」

「そうだけど」

はあ、はあと呼吸が荒くなると身体ごと引かれた。そのときノックの音が響き、妹さんが盆を持って控えめに扉を開けた。

「お茶とお菓子持ってきた」

「ああ」

「…懐かしい制服なんて引っ張り出してなにしてんの?」

「…学ランが珍しいってイウカラ…」

片言になりながら返事に困る三上に嘘をつかせて申し訳ないと思う。

「学ラン着たことないの?珍しいね」

妹さんに問われぎこちなく頷く。

「中学から東城?」

「です」

「ふうん」

お盆をこたつに置くと妹さんがすとんと座った。

「陽ちゃん遊ぼう」

「後でな」

「今がいい」

「沙羅と遊んでろ」

「沙羅はまだ帰って来てない」

「は?もう六時過ぎてんぞ!?」

「部活終わったらそれくらいになるでしょ」

「門限は五時って決まってんだろ」

「それ小学生のときの門限だし…」

認めん、とぶつぶつ呟く姿を見てまるで反抗期の娘と父親だなとおかしくなる。
三上は誰に対しても無関心でニュートラルで我関せずの姿勢を崩さない。こんな風に叱ったり、甘やかしたりするのが珍しくて眺めているだけで楽しい。

「ねえ、泉さん、だっけ?」

急にお鉢が回ってきたのでぴんと背筋を伸ばした。

「泉さんも柴田さんと友だちなの?」

「まあ、一応…」

妹さんはぱっと顔を明るくし、意地悪そうな表情から歳相応の少女の笑顔になった。

「柴田さん元気?」

「元気です」

「彼女できた?」

その質問にはどう答えるべきかわからず首を捻った。
彼女はいないが彼氏がいる。正直に言うわけにはいかないし、でも特定の人はいるし、期待をさせるのは酷だし。

「皇矢にいないわけねえだろ」

三上が横から口を挟むと妹さんの頬が膨れた。

「あの女ったらし、女が切れたことなんてねえんだよ」

「じゃあ切れたら教えて。次は私とつきあってもらう」

「教えるかよ。あんなのやめて普通に同じ高校の男にしとけ。ただし真面目で、誠実で、成人まで指一本も触れないような男な」

「だからそんな男子いないから。それに私は柴田さんがいいの」

「追いかけても無駄無駄」

「わかんないじゃん!なんで陽ちゃんそんな意地悪言うの!?」

「意地悪じゃなくて現実。皇矢は女に本気になるような男じゃない。かといって遊びで俺の妹に手出す男でもない」

「じゃあ本気になってくれたらいいんだ」

「だからー…」

三上は話しにならないと言いたげに溜め息を吐いた。二人の間の空気が険悪に染まってきたので苦笑しながらまあまあととりなす。

「好きをやめろって言われてやめられるものじゃないしね…」

「そう!泉さん話しわかるー。陽ちゃんは女っ気ないから恋する気持ちがわからないんだよ!」

それには完全同意だ。三上はもう少し人を愛おしく想う気持ちがいかに難儀か知る必要がある。

「もたもたしてたら沙羅にとられちゃう」

「安心しろ。どっちも眼中にねえから」

「ひどい!柴田さんは可愛いって言ってくれたもん」

「それは女としてじゃなくて小さい子どもを可愛いって言うのと同じ意味だから」

「そんなことないもん!」

「そんなことあんの。あいつが相手にするのはいつも決まって巨乳でめちゃくちゃ気の強そうな美人かびっくりするほどの美少女だし、年下は趣味じゃねえってよ」

皇矢の女性遍歴は知らないが、一度学校まで来た元カノは確かに可愛かった。ふんわりした長い栗色の髪と真っ白で陶器のような肌。桜色の唇に小さな身長。美少女のイメージそのもので、高杉先輩の妹と聞いて二重に驚いた。
だけど三上の妹だって可愛らしいし、この世に絶対はないので皇矢が見初める確率はゼロではない。かといって高杉先輩から心変わりするかと聞かれると今のところその気配はない。
酷だがこれが現実。叶わない恋に身を焦がす気持ちはともてよくわかるが兄としてはそんな辛い想いをしてほしくないのだろう。

「…じゃあ頑張って胸大きくするもん」

「無理だろ。遺伝だ、遺伝」

「陽ちゃんの意地悪!」

妹さんはすっと立ち上がり陽ちゃんなんて嫌い、と地雷を設置して部屋から出て行った。案の除三上は魂が抜けたようにぽかんとしたあと目頭を押さえた。

「妹が反抗期だ…」

「ま、まあ、恋する乙女は強いから」

「帰ったら皇矢殺すか」

「物騒。大丈夫だよ。きっと恋というか、憧れの方が強いんじゃないかな」

皇矢の恋愛観を知っても好きだと言えるのならそれはもう天晴れだが、女性は大抵最低とか、クソ野郎と皇矢を称する。
寝るだけの関係と割り切れば適切な相手だろうが、一度寝れば情も移る。そうなったら地獄だ。

「万が一、万が一妹のどっちかと皇矢がつきあうなんてことになったら皇矢を火山の中に放り込む。絶対に」

「だ、大丈夫だって。高杉先輩の壁は高いよ。皇矢は確かにちゃらちゃらしてるけど好きになったら一途だと…思う…」

自信を持ってそうだと言えないのが切ないが、今すぐどうこうというのはないだろう。皇矢は高杉先輩の尻尾を追いかけては袖にされ、ますます夢中になっている。
高杉先輩が計算しているとは思えないが、結果的に主導権を先輩が握るやり方は狩猟タイプの皇矢にがっちりはまったのだろう。

「なんだってどいつもこいつも皇矢なんか…俺が女なら絶対ごめんだね」

「あー、三上が女性だったらむしろ皇矢が追いかけてたかもね。三上冷たいから」

「冷たいから追いかけるの意味がわからないんですけど。諦めろよ」

「それが諦められないんだなー。三上の冷たい目って癖になるんだよね」

「気持ち悪」

「まあ、どんな風でも僕を喜ばせるだけだから」

結局のところ三上が三上である限り、優しかろうが冷たかろうが、等しく愛おしいということだ。
三上はストーカー怖いと呟いて項垂れたが、この気持ちは何人たりとも阻害できず、自分でも止められないのだからしょうがない。開き直ると清々しさすらある。
妹さんが運んでくれたお茶を飲みながら、そろそろ着てもらおうとそわそわすると、階下からお兄ちゃーん、と三上を呼ぶ声がした。

「沙羅のこと学校まで迎えに行ってちょうだい」

「今度はなんだよクソが。ちょっと待ってろ」

「お、お構いなく…」

なんだようるせえなと文句を言いながら階段を降りる彼を見送り、不思議な空間に胸がぎゅうっとした。
学校にいるときの三上とも、自分といるときの三上とも違う。
家族の中で長男としての三上はこんな風なのだ。両親に口を挟まれ、妹には可愛らしい文句を言われ、面倒くさがりなのにそれに一応応えようとする。
なんだかんだ、面倒見がいい性格はこうやって出来上がったのだろう。
そういえば幼い頃から仕事で不在な両親に代わって妹の面倒をみていたと言っていた。
そのせいか、看病はできるし日常の細かな知恵も持っている。こちらが驚くほど繊細な部分まで。
お兄ちゃん、なんだなあと改めて思う。自分も三上の弟に生まれたかった。そうしたら一生、死ぬまで切れない縁で繋がって、可愛がってもらえたかもしれない。
変な想像をしてにやにや笑うといつの間にか戻ってきていた三上にきもいとばっさり切り捨てられた。

「俺ちょっと沙羅の学校行って来るから一人で待ってろ」

「うん。お兄ちゃん頑張れ」

ぐっと拳を作ると三上は大きく溜め息を吐いて出て行った。
これは学ランを抱えてごろごろできるチャンスではないか。しかし万が一妹さんが部屋に来たら変態と摘み出されるかもしれない。
それなら匂いだけでも。クリーニングに出して保管していたのだから無臭だろうが、それでも少しくらい。
どきどきしながらカーテンレールに吊るされている学ランに手を伸ばすと大きな音を立てて部屋の扉が開いた。ひっ、と引きつった声を出しながら肩が揺れる。

「陽介ー!…て、あれ、いない感じ?」

振り返るとシンプルなセーラー服のスカートからすらりと細い脚を出した、金に近い茶色の長い髪を緩く巻いた女性が立っていた。肌の色は健康的な小麦色で化粧もきっちり施している。所謂ギャルという人種だろうか。苦手な部類なので身体を小さくした。

「…陽介の友だち?」

「は、はい」

「そうなんだ!よろしくー」

「どうも…」

頭を下げると真面目ーとけらけら笑われた。君は一体誰なんだ。
ギャルは腕につけたシルバーのアクセサリーをしゃらしゃらと鳴らしながらベッドの上に腰掛けた。短いスカートのまま細い脚を組んだので目のやり場に困り、意図して視線を逸らした。ゲイなので不埒な気持ちにはならないが不躾に見るものではない。

「何君?」

「い、泉です」

「泉君?私は椿。で、陽介は?」

「今妹さんを迎えに…」

「でたー。相変わらずシスコンー」

うけるよね?と同意を求められ曖昧に頷いた。
テンションが高く、物怖じしないあけすけな様子は潤と被る。

「泉君座りなよ」

「は、はい…」

床に正座をし、太腿の上に置いた拳を見詰めた。
椿さんは先ほどから三上のことを名前で呼ぶ。そんな女性がいるなんて知らなかった。自分は名前で呼ばれないと言っていたのに。それに、こんな風に当然のように部屋にも上がれるなんてどんな関係なのだろう。元カノとかだったらどうしよう。現実に打ちのめされて暫くへこむ。

「じゃがりこ食べる?」

ずいっと差し出され、いただきますと一本とった。

「泉君ちょー礼儀正しいじゃん。陽介の友だちなのに」

「すいません…」

「いやいや、いいことだよ!陽介も見習ったらいいのにねー」

はは、と乾いた笑みしか返せない。
どうしても女性を前にすると身体が硬くなる。小学生の頃散々女の子にいじめられたせいだ。自分をターゲットにしていた子はまさしくこんな風にずけずけと物を言える目立つタイプのリーダー格だった。見た目が同じようだからといって中身まで一緒なわけないのに、防衛本能が働いてシャッターを下ろしてしまうのだ。

「てかさ、陽介高校に友だちいるんだ。安心、安心」

「…え?」

「あいつすかしてるし友だち作りたがらない奴だったから」

「そう、なんですか?」

「そうそう。色々あってさー。でも泉君みたいに真面目そうな子が友だちでいてくれるならよかったよ」

椿さんは屈託のない笑顔を見せ、お菓子を頬張った。

「ぼ、僕以外にもたくさん友だちいます」

とはいえ、皇矢と潤と甲斐田君くらいだけど。後は先輩たちだ。あれを友だちと言っていいのかわからないが、可愛がってもらっているには違いない。

「マジ?想像できない。やっぱ男子校を選んだのは正解だったのかなー」

脚を組み直した椿さんをぼんやり見た。
どういう関係かはわからないが三上の過去を知っている人。三上は自分のことを話そうとしないので知らないことの方が多い。椿さんに聞いたら教えてくれるだろうか。こんな機会でもなければ一生知れないかもしれない。

「…あ、あの、三上はなんで東城に来たんでしょうか」

「え?」

「いえ、高校から東城に来る生徒はとても珍しくて…三上は自分のこと全然話そうとしないし、と、友だちとしては少し寂しいなあ、と…」

「あー、そうなん?でも陽介が話さないなら私が言うのもねー」

ごもっともな答えに項垂れた。

「そんなに聞きたい?」

ぱっと顔を上げて前のめりにりながら頷くとぷはっと笑われた。

「じゃあ陽介の高校の様子教えてよ。確かにあいつ聞いても言わないから私も気になるわ」

「えー、と」

思い出しながら、なるべく嘘はつかず、成績はよくないが友だち想いで先輩たちによく絡まれては嫌な顔をしていると話した。

「先輩かあ」

「はい。みんないい先輩です」

可愛がり方に問題がある先輩ばかりだが、根底には三上への好意がある。あの有馬先輩ですら。

「そっかー。やっぱ男子校だとさっぱりしてる?」

「うーん…そうでもないけど三上の周りの人達はみんなさっぱりしてます」

口下手なりに一生懸命話すと、椿さんはうんうんと頷いては笑ってくれた。
見た目はとても派手で、口調も多少乱暴ではあるが性格は優しく、いい人なのだと思う。

「楽しそうじゃん。陽介が寮生活なんて絶対無理と思ってたけどそうでもないんだね」

「規則はあってないようなもので、結構緩いので…」

「へえー。東城って頭いいしがっちがちに厳しいのかと思った」

「そうでもないです。校則も緩いので、髪染めてもピアスしてもなにも言われません」

「マジか。ちょー羨ましい。なのに泉君はやらないんだね」

「ぼ、僕はそういうのよくわからないんで…」

「あー、制服の着方ださいもんね」

ぐさっと矢が胸に刺さった。その自覚はあるが、そんなはっきり言わなくてもいいではないか。

「顔はそんな悪くないし、髪とかちゃんとすればモテるんじゃね?」

「モ、モテなくて大丈夫です」

「なんでー?あ、女苦手?」

ぴしっと表情が固まった。上手い切り替えしが思い浮かばず冷や汗が流れる。

「そっかそっか、そういうこともあるよねー」

しかし、椿さんは気に障った様子もなく適当に流した。
興味がないのだろうなと思うが、この軽やかさは自分にはむしろありがたい。

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