高校生



「ゆうき君、久しぶりだね!」

目尻を緩めながら微笑んだのは木内先輩の父親であり、学園の理事長でもある氷室誠一だ。
握手を求められそれにぎくしゃくと応える。
自分の隣には木内先輩、そして室内には見知らぬ中年の男性がいて、こちらを見てにこりと微笑んだ。
格式高い料亭の座敷に招かれ、足を運んだのが先刻のこと。
理事長と中年の紳士は二人揃って日本酒を酌み交わしていた。

「ささ、座って座って」

理事長は紳士の隣に席を移動すると、先ほどまで自分が着いていた席を指した。

木内先輩の家に休日を使って連れて来られたのも、いつもの先輩の気まぐれだと思っていた。
しかし今回はわけが違うらしい。
何故ってこうしてわざわざ外で理事長に対面しているあたりが。彼は計画を知った上で何も言わなかったのだ。
先輩の部屋に置いてある洋服の中でも一等上質なものを用意され、それに着替えさせられたときから嫌な予感はしていた。

「ご飯は?お腹が減っていればなんでも頼んで」

「ゆうきが腹減ったってうるせえから家で食ったんだ」

「残念。ここの刺身は絶品なんだ。是非食べて欲しかったな」

「食えるか?」

木内先輩に聞かれ、緩やかにかぶりを振った。
誉められたことではないが、人見知りは人一倍激しい。見ず知らずの大人の男性の前で食欲を満たす気にはなれない。
この紳士は敵か味方か、そして自分は何故このような場所にいるのか。疑問が浮かんでは消えていく。

「仁、ゆうき君、こちらは高岡さんだ」

「初めまして。高岡と申します」

紳士と握手をする先輩を横目に、自分は興味なさ気にことの成り行きを傍観した。
理事長とこの高岡という男の関係は知らないが、大方仕事の付き合いか何かだろう。

「君が真田君だね?」

問われ一度首肯した。

「よろしくね」

高岡さんは人がよさそうな笑みでこちらに手を差し出した。数秒考え、視線は合わせず軽くその手を握った。

「何か飲み物でも頼んで。気を楽にして」

警戒心剥き出しの自分に気付いたのだろう。理事長は足も崩して大丈夫と笑った。

「ゆうき、何飲む?」

「…お茶」

「じゃあ俺も同じのでいい」

「欲がない子どもたちだね」

高岡さんは緩やかに微笑みながら言い、自分は上目でそれを見詰めた。
悪い人ではないのだと思う。けれども、なんだか落ち着かない。そわそわと心が揺さぶられじっとしていると嫌な汗を掻きそうだ。
子どもの自分でも多少理解できる。
仕事相手に会うのにわざわざ自分と先輩を呼び出した理由が必ずある。そしてその矛先は先輩ではなく、自分に向いている。
そうでなければ自分がここにいる意味がわからない。
その内女将により温かいお茶が運ばれたが、それには口をつけなかった。

「安心して。毒なんて入ってないから」

理事長が場の空気を和ますように冗談を言ったが、それでも手を伸ばす気になれない。
自分は平凡な家庭、いや、貧乏な家で育った。それ故行儀も礼儀もマナーもわからない未熟な子どもだ。例えばこんな場所でどう振舞っていいかわからない。
色んな世界を見ている大人の前でどんな子どもでいればいいのかわからない。
礼儀がなっていない子だと侮蔑されるよりは、人形のように黙って座っている方が賢明だと思う。
お茶の飲み方一つにしても値踏みされそうで怖い。
その証拠に、高岡さんは先ほどからさりげなくこちらに視線を送っている。その瞳の奥には厳しい威厳が隠れており、ひじょうに居心地が悪い。
ふと、理事長のすぐ傍に一冊の雑誌が転がっているのを見つけた。見慣れた表紙のそれに、視線が離れない。

「ああ、これかい?」

視線に気付いたようで、理事長がページを嬉しそうに捲った。

「仁に聞いて買ってみたんだ。百冊くらい。会社のすべての部署において、自宅にも置いたよ。本当は社員に配ろうと思ったんだけど、秘書にやりすぎだって怒られてね」

ああ、なんていい迷惑なのだ。
その雑誌は梶本と一悶着起こしながら、渋々撮影に臨んだ写真が掲載されているものだ。
恨めしそうに先輩を睥睨すれば悪いと言わんばかりに苦笑された。
理事長は写真が載っているページで指を止め、益々嬉しそうに微笑んでいる。

「我が学園の生徒がと思うと誇らしいよ」

その表情は、我が子が功績を収めたときの父親のようだ。
心の底から嬉しいのだと一目でわかるが、しかしいい迷惑だ。
世間にはこの写真が出回っており、他人の目にも触れているのだと思うと後悔の念が押し寄せる。
雑誌のメインは女性モデルで、自分はお飾り程度に写り込んでいるだけなので、どうか誰も気に留めませんようにと願う。それでもコンビニ、書店、色んな場所でこの雑誌を見つける度に、破り捨ててしまいたい衝動とどうにか戦っている。
話題を早急に変えたくて固く閉じていた口を開いた。

「理事長、俺に話があるんじゃ…」

「あれ、お見通しかい?」

茶目っ気がある瞳で言われ溜め息を吐き出したかった。
こちらは慣れない場所に四苦八苦しているというのに、この人はいつだってマイペースだ。
先輩はおもしろそうに眺めているだけで、こちらが助けを求めても傍観を決め込む。いつだってそうだ。人付き合いが苦手だと理解しているのだから、少しのフォローくらいあってもいいのに。

「実はゆうき君にお願いがあるんだ」

その一言に嫌な予感が的中したと思った。
以前そんなセリフを理事長から聞いた次の瞬間には殴りたくなった記憶がある。あの時は女装をさせられた。娘がいたらこんな風だったのかなと、理事長はとても幸福そうに笑っていた。

「まあ、話しの続きは高岡さんから」

「そうですね」

高岡さんは胸の内ポケットから重厚な皮の名刺入れを取り出し、その中から一枚をこちらに、一枚を木内先輩に差し出した。
社会人として手馴れた仕草に、狼狽しながら受け取った。
聞き慣れた車メーカーのロゴが左上に印刷され、中央には高岡信一という名前。その上には広報部部部長と記されていた。
自分にはよくわからないが、たいそうな位の人物だということだけはわかる。

「…こんな偉い人が俺に何の用ですか…?」

名刺を片手で持ったまま問いかけた。真意がわからずつい胡乱な視線になる。
高岡さんは日本酒の猪口を片手に微笑んだままだ。

「真田君、氷室さんに雑誌を見せてもらってとても驚いたよ」

「私が数日前にうちの生徒なのだと自慢したんだ。我が子が雑誌に載ったようで嬉しくてついね」

「是非一度会ってみたかった」

「感想はどうですか?」

「申し分ないね。想像以上だよ」

二人は満足気に会話を交わしているが一体なんだというのだ。わけもわからず困惑した。

「まず君の目が気に入ったよ」

「…目?」

「真っ黒な目なんて見慣れているはずなのに惹かれるものがある。奥に透明なものがあるような瞳だ」

だからか。先ほどからやたらと視線が交わるのは。

「そのオリエンタルな雰囲気も素敵だと思うよ」

「そうでしょう」

理事長は満足気に高岡さんの言葉に頷いた。

「ゆうき君が入学したときには大騒ぎでしたよ。同じ人類とは思えないと。やっとその姿を見たときには嬉しくて嬉しくて…」

理事長に涙を拭う真似をされげんなりとした。容姿の話しは大嫌いだ。こんな顔も漆黒の髪も人から褒められた部分すべてを正反対に塗り潰してやりたい。

「真田君、ビジネスの話しをしたい」

高岡さんが唐突に切り出した。

「我が社のCMに出て欲しいんだ」

「……は?」

「相変わらず素直な反応をするね、ゆうき君は」

「…え?」

それ以外に言葉が喉を通らない。本当に。
人間、予想外の事態に巻き込まれると素っ頓狂な言葉しか出ないらしい。品のなさ、育ちの悪さが顔を出す。

「是非どうかな。勿論ギャラも出すし、悪くない話しだと思うのだが」

「…あの、話しが見えないんですけど…」

「ああ、そうだね。困らせてしまった」

物分りの悪い子どもだと呆れてもいいはずなのに、高岡さんはそんな雰囲気を微塵も感じさせず、一から説明しようと言ってくれた。

「弊社の名前は聞いたことがあるかな?」

「はい…」

「それは光栄だ」

というか日本人なら知ってて当然だ。子供から大人まで。

「何本かCMを流しているのだが、新しいCMの企画を今練っている最中なんだ。だいたいの流れは出来上がっていて、今丁度誰を出演させるか悩んでいたところで、氷室さんに君の写真を見せられてCMとよく合うと思ったんだ。君のために作ったと言っても過言ではない、かもしれない」

喋々しい物言いにぽかんと口を開けた。なにを言っているのかまったく意味がわからない。

「これはすごいことだよ?素人の君にここまで傾倒してくれるんだから」

理事長は興奮を抑えきれないといった様子で身体を前のめりにした。

「…はあ」

「うんと言ってもらわないと私も困ってしまうんだ。絶対君がいいと候補を探していた部下にも仕事を止めさせた。君が断ったら放送が延びてしまう」

これは脅迫というものだろうか。
温和な口調と苦笑交じりの表情からは切羽詰まったものは感じられない。狡猾であるべき大人が使う手段の一つということか。

「いい返事をくれるとありがたいのだが」

「…でも、うちの学園ってアルバイト禁止ですよね…」

そんな校則気にも留めていないが、体よく断るには学生の絶対的規則を持ってくるのが一番だ。

「そんなもの私がなんとかするさ。だって理事長だもん」

校則を作っておきながら自ら破らせるとは。東城は大丈夫だろうか。

「…いや、でもテストとか近いし」

「大丈夫、それもどうにかするから!」

どうにかできる力はあるだろう。そうでなければ木内先輩が順当に学年を重ねられるわけがない。

「…じゃあ、本音を言いますけど…」

一度大きく溜め息を零した。
理事長と高岡さんは、期待できらきら光る瞳で一心にこちらを見詰めた。

「この雑誌だって、本当にどうしようもなくて引き受けただけだし、俺は人前に出たりするのが本当に嫌いで…。だから申し訳ないですけどお断りします」

言うと彼らはがっくりと頭を垂れた。大の大人二人が揃って高校生相手に必死になってなにをしているのかと呆れる。

「そこをなんとか!なにか欲しいものある?車あげようか?」

「俺未成年ですし免許ないですし…」

モデルでも俳優でもない、一般人のたかが高校生相手に一流企業の部長様がこんな低姿勢などお笑い草だ。
そんな価値は一銭もないというのに、何故伝わらないのか。

「どんな条件を出されても…」

「えー、勿体無い!ほら、仁からも何か言って」

助けを求められた木内先輩は、頬杖を着きながら横目でこちらを見た。
その瞳はおもしろくて仕方がないと言っている。

「…俺はゆうきの好きなようにすればいいと思うけど」

口では一応そう言うが、おもしろいからやれよと言いたいのがみえみえだ。

「どうすればうんと言ってくれるかな?」

「どうされても無理なものは無理です」

「うーん、これは手強いなあ…。氷室さんも言ってくれれば交渉役を用意したのに、慣れていない私では真田君を頷かせるのはとても難儀だ」

苦笑を零した高岡さんは猪口の酒をぐっと煽った。

「…仕方がないなあ。ゆうき君のこと、私はとても好きだよ。だからこの手は使いたくなかったんだ」

ああ、益々嫌な予感がする。
幾つもの修羅場と混沌とした世界を見てきた獣の前では、自分は小さな小さな兎でしかない。あっという間に捕えられ、胃袋に収められるか、徒に殺されるかの二択だ。

「…高校中退とかになったら、すごくまずいよね…」

理事長はさも悲しそうな瞳で言った。
立場と権力を盾にされれば子どもの自分は抗えない。堂に入った冷酷さは仕事上必要なのだろう。しかし、それが我が身に降りかかれば恐怖に戦くしかない。

「お友達ともまだ一緒に過ごしたいよね…」

「…やり方が汚いと思うんですけど…」

「はは。ゆうき君の言う通りだ。しかし、我々の世界では甘い方だよ」

言葉とは裏腹な柔和な笑顔に苛々する。
学園に未練はない。でも今の時代、中卒で働ける場所は限られているし、親の加護を持たない自分は住家すら得られない。そうなればまた親父と暮らすはめになる。母は自分の顔など二度と見たくないだろう。親父の慰め者になった挙句高校もまともに卒業できないとなれば、どんな中傷を受けるか。

「…理事長のこと嫌いになるかも」

深く溜め息を吐いた。

「それは困る!自分の息子よりも君の方が好きなのに!」

「じゃあ今のなしにして下さい」

「…私も辛いんだよ。わかってくれ」

自分は理事長に弱いと思う。
どことなく木内先輩に似ているし、世話になっているし、負い目もある。
先輩と恋人同士だとこの人が知っているかはわからないが、大事な跡取りの一人をこんな風に振り回しているのは自分だ。

「真田君、頼む」

仕舞には二人に頭を下げられた。
ビジネス界では恐れられると共に注目と羨望の眼差しを向けられている者たちが、なにをそんなに必死になるのか。

「ゆうき、どうすんだよ」

「どうって言われても…」

断れば理事長からの制裁が待っているし、万が一息子とも別れてもらう、なんて言われたら生きていけない。
高校を退学になった挙句、先輩も失えば自分が選択できるのは死か鮪漁船だ。
元々未来に希望など持っていなかったが、また地獄の果てに逆戻りだ。
それが先輩と出会うまでは普通だった。特に実家にいた頃は。
父の怒号と、母の悲鳴、硝子が割れる音の次には自分への暴力の限り。そして、最終的には身体まで。
あの地獄よりも恐ろしい生活を思い出し、血の気が引いた。
あのときのように、無気力で死んだも同然の生活をしろと彼は言うのだろうか。

「…返事は先輩に任せる…」

思考が上手く回らなくなり匙を投げた。自分はどちらも選べない。
まだ友人といたい。木内先輩の傍にいたい。親父には二度と会いたくない。でもCMなんて絶対に嫌だ。
先輩は吐息を零して二人に頭を上げるように言った。

「ゆうきを退学にするのは俺も困る」

「私だってそんなことはしたくない」

「こんな理由でそれはやりすぎだろ」

「ああ、冗談だ」

「半分本気だろ?」

「さあ、それはどうかな」

喰えない言葉に木内先輩はもう一度溜め息を吐いた。

「…こいつは身寄りがないも同然なんだ。実家に頼れないわけがある。今こいつを放り出されたら困る」

「…そうなのか?ゆうき君」

問われ青い顔のまま頷いた。

「それは驚いたな…」

「子どもを導く立場の親父がそんなことしてみろ。反感買うなんてもんじゃねえぞ」

「はは、学園を退学したとて私の家にいればいいじゃないか。ゆうき君がいるなら毎日家帰っちゃおうかなー」

「なに馬鹿なことを…。こいつは頑固だから、そうはいかねえの。けど、親父や高岡さんの気持ちもわかる。こいつの容姿は価値がある。それを埋もれさせるのも勿体ないと思う。けど、ゆうきがどうしても嫌だって言うなら諦めるしかねえだろ」

「無理を言っているのはわかっている。おっさんの我儘だと思って聞いてくれないかな」

そんな縋るような瞳で見詰められても困る。
自分の容姿を評価されたところで何の意味もない。忌み嫌っているのだから。

「まあ、何事も経験は必要だと思うぜ?特にお前は夢とかないんだから」

木内先輩はぽんと気楽に肩を叩いた。経験という言葉に収まる些末な出来事じゃない。特大すぎて手に余るだろう。

「女の子にもモテるぞー」

理事長はひゅーひゅーと冷やかした。なんだこのおっさん。

「…興味ないっす」

「クールだなあ…」

理事長はいよいよ困った様子で、手を口元に持っていき悩みだした。
どうしたって自分の意志で首を縦には触れない。誰の目にも映りたくない。ひっそりと群衆に埋もれて生活がしたい。自分の願いは些細なのに。やはりこの顔か。この顔が諸悪の根源か。それならすぐにでも焼いてしまおう。木内先輩には捨てられるかもしれないけど。

「…お前、顔ぐちゃぐちゃにしようとか考えてるだろ」

思考を読まれびくりと肩を揺らした。

「…こんな顔別にどうなったって…」

「だめだめ!それだけは絶対にだめ!百カラットのダイヤを溝に捨てるようなものだよ!?」

理事長は大袈裟に首を振った。
脅されたりもしたけれど、それでも理事長のことは嫌いではない。
こんな愛想がない自分にも気を遣い、そして可愛がってくれる。
先輩との関係も薄々気付いていると思う。学園の中にいればそんな噂を耳にすることもあるだろう。子どもの嘘を大人はいつだって見破る。知らぬ振りが上手いだけだ。
それなのに変わらず自分に接してくれる。顔を合わせても嫌な顔一つせずに。
このまま断り続ければ息子と一切の接触を絶てと言われるかもしれない。
それだけは困る。どれもこれも困るが、自分が少し我慢して木内先輩との関係が守れるなら安いものではないか。心の針が揺れ始める。
学生の期間だけでもいい。彼との時間を守りたい。
一度深呼吸をした。

「……じゃあ、先輩も一緒に出るならやります」

小さく言うと二人はぱっと表情を輝かせた。
逆に木内先輩は突然のことに焦りながらも首を左右に振った。

「馬鹿言ってんじゃねえよ。嫌に決まってんだろ」

「そんなことでいいなら喜んで仁を差し出そう!」

「アホなこと言ってっと頭かち割んぞ」

「よかった!半分諦めて部下への言い訳を考えていたんだ!」

「こら、話し勝手に進めんな」

「そうと決まれば企画を進めるよ!真田君の気持ちが変わる前に契約しなきゃ!」

「おい、俺の話し聞いてる?」

「よかったですね、高岡さん」

「ええ、本当に。氷室さんにはまた借りができてしまったなあ…」

「はは、気にしないで下さい。プライベートなことですから」

「おーい…」

先輩の言葉など耳に入ってないかのように、おっさん二人は両手で握手しながら喜びを分かち合っている。

「…ゆうき、お前…」

「何事も経験は必要、だろ?」

先程彼に言われた言葉をそっくりそのまま返してやった。

「てめえ…」

死にそうなくらい嫌なことでも、彼と一緒なら少しは耐えられると思った。
知らない人に囲まれて、知らない土地で未知の経験。考えただけで頭がパンクする。せめてそこに彼がいてくれれば。
それなら頑張れる気がする。だから許してよ先輩。
どうしても先輩と別れられないし、友人ともまだ一緒にいたい。理事長の願いならば叶えてあげたいとも思う。
自分独りでは背負いきれない願いでも、彼と半分に分けたらどうにかなると思った。

「後で覚えてろよ」

二人には聞こえぬよう耳元で囁かれ、どちらに転んでも地獄行きだと知った。

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