煌めいた愛に沈む


鳴り響く着信音で目がさめた。
半分以上もまぶたを伏せたまま頭上を探り、電話に出ると。

「オレ。会いたいから来て」

ふざけるな。と言う気すら失せる。
無言で通話を切ると、また着信音が鳴り響き、おなじように手探りで電話に出る。

「ねえ。来てって言ってるんだけど」
「…………むり」

ようやく絞りだし、通話を切った。
当然、また鳴るわけで。無視を決め込むのも音がうるさいし後々めんどうなため、仕方なくまた出る。

「殺されたいの?」
「…………ころしていいから……イルミがきて……」
「やだね。早く来て」

今度は向こうが先に通話を切った。
時間はわからないけれど、室内が暗闇ということは真夜中なんだろう。そんな時間に突然電話してきて今から来いだなんてことは、まあ、たまにあるわけで。まったく良家のお坊っちゃんはどこまでも横暴でわがままだ。




「あーいますぐイルミを殺りたい」

目的の部屋に着き、寝室への扉を開きながらそう告げた。
すでにベッドインしていたイルミは上半身を起こして本を読みつつ、呼び出してごめんね。来てくれてありがとう。など言うわけもなく。

「ナマエには無理だよ。ていうか、みんな寝てるしその殺気消して。何時だと思ってるの」

こっちが言いたいよ!何時だと思ってるの!そう叫びたいのは山々だけれど、感情を爆発させてもどうせこの男は顔色ひとつ変えない。
適当に着てきた服を脱いで、寝やすいよう下着姿になったところで勢いをつけてとなりに潜り込んだ。

「イルミ、よく聞いて。あなたの家族が寝てるように私も気持ちよーく寝てたの。それをあなたが起こして、こんな場所に来させたの。家族に向けるその想いやりを、ほんっの少しでいいから私にも向けてくれない?」
「だからうちに住みなよって前から言ってるじゃん」
「それは嫌」

こんなに腹が立っているのに、非常識な呼び出しを無視できず。覆い被さってくるのを突き飛ばせず。私が甘いから、イルミも調子に乗ってわがままを言うのだろうか。
横暴な言葉に似合わず、やさしく侵入してくる舌を受け入れるころには、まあ、もうなんでもいいや。と思ってしまう。

「ナマエは今日仕事あるの?」
「ん……朝からだから、あと2時間しか居れない」
「ふーん。キャンセルしなよ」
「……むり」
「依頼額の倍振り込むから」
「……むり」
「行けないように脚斬ろっか」
「ふふ、」

太ももに這った指先がくすぐったくて、笑ったわけじゃない。たぶん、いつにも増して無茶苦茶を言ってくるイルミに、怒りを通り越して可笑しくなってしまったからだ。
文句は尽きないけれど、要は私はこのわがまま坊っちゃんが好きで仕方ないらしい。
一緒に住みたくはないけれど。



thanks/たとえば僕が


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