nar/カカシ


※危うくイルカ先生vsペインになりかけたあのシーン直前のカカシという設定で。



皆、いなくなった。
皆、死んでしまった。
四代目を名乗った、私にとって誇り高き師。その師だった豪快なあの御方。妻と子を残し自らの意志を弟子に託した同僚。その父はこの里の者すべての父親でもあった。友人のあいつも己の瞳を親友に贈り、若くしながら散っていった。
至る方角から聞こえてきた爆音に隣のカカシが立ち上がるなり、こうして今は亡き彼らが不意に頭を過った。何故こんなときに。こんなときだからこそ、か。


「カカシ」
「ついに来たみたいだね」

あの自来也様が敵わなかった相手だけれど「死なないで」なんて言いたくない。
「行かないで」なんてもっと言いたくない。
でも出てきそうになる言葉はそれらと似たようなものばかり。


「そんなに不安な顔しないでちょーだいよ」

いつもの変わらない声色と穏やかな表情。
その裏側に纏う殺気は、覚悟の証。


「・・・カカシ」
「ん?」
「聞かせて。その覚悟は、なに?」

私の問いに視線を落としながら額当てを押しあげ、左目を露にしたその表情はいつになく真剣なものへと変貌した。


「死なない覚悟だ」


「いつでも死ぬ覚悟はできている」どこかでよく耳にする言葉だけれど、そんなものを戦場に持ち込んでもなんの役にも立たない。
必要なのは、生きる覚悟。生き残る覚悟。
私を一瞬だけ抱き寄せて消え去った、僅かに残った感触を胸に閉じ込めながら同じ覚悟を決めて前線へと向かう。
増してきた爆音と黒煙が充満しつつあるこの里に、彼に、私に、どうか明るい未来を。


fin
2008.10.11up

2015/05/06 22:16
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