俺はまぁ、強いて言えば暇だったから。 備わっていたチカラを使えるうちに使ってみた、と言ったところか。 自由の身から誰かのモノへ。 抵抗こそすれ、自分という存在を待て余していた俺には、それはあまり理由のないものだった。 その後しばらくは外に出される機会もそう無く、当時のことは居心地の悪さ以外特筆する点は無い。 あるとき『そこ』から解放されるかも知れない日が来た。俺を捕まえたやつの顔色を盗み見たところそいつの意志では無さそうだったが、所詮、どこへ行っても同じなのだろうと先刻の期待を塗りつぶした。 送り先は概ね予想していた通りのところだった。が、思いも寄らなかった点がひとつ。 俺は、そこで1人の同族に出会った。 勘だが、警戒に及ばない相手だと思った。 同族だからではない。向こうも同じように思っているらしいことが、なんとなくわかった。 いろんな話をした。 何も話さずに他のやつらを眺めたりもした。 気付けばダチと呼ぶには余所余所しく、家族と呼ぶにはくすぐったい様な、そんな関係になっていた。 そしてまたあるとき、俺はまた別のやつの持ち物になることがわかった。 例の同族のことがあったのであまり乗り気ではなかったが、俺は結局流れに身を任せた。 次の送り先は前2つとはあまりに違う環境だった。周りに誰も居ないのだ。 次こそ、君は幸せになれるよ 波の音しか聞こえないそこで、俺は2人目のトレーナーがそう言っていたのをぼんやり思い出した。 不幸だと言った覚えはない。 |