久々に一人で夜の町を歩く。
桂はあまりお金を持っていない。ので付き合う前よく二人で飲んでいた安いおでん屋にいく。
川岸にあるおでん屋の椅子に座る。

「いらっしゃい、今日は銀さんと一緒じゃないのかい?」
他意はなく気軽に聞いてくる屋台のおじさんに少しどきりとする。

「ああ、…今日は一人だ」
「そうか…、いつも銀さんにお世話なってるし、安くしとくよ。いつもの飲むかい?」

軽く頷く。自分の顔には所々痣がある。だが、おじさんは少し年を取っているし、夜と言うこともあり、影が濃くなって見えづらくなっていた。

辛気臭い顔をしていると、背後に気配を感じた。誰か客が来たのかと思い、真ん中に座っていたのを右にずれた。

ふと銀時が来てくれたのかと思いちらっと横を見ると、座ったのは高杉だった。

「高杉…」
「よォ、ツラァ。辛気臭ェ顔してどーした」

自分が落ち込んでいるのを隠せていたつもりだったが、やはり年のとった普通のおじさんと高杉じゃあ違う。高杉は人の変化に気付きやすい。

煙管を吸いながら高杉は桂を見る。いつもと少し違ったような目付きをしていた。…ように見えた。

「いや、…とくに何もないが」

強がる。きっと銀時は自分が感情の操作が出来なくなったことを知られたくないだろう。と思い。だが、本当のところ桂はただ強がりたかったのだ。

「そうか」

少し沈黙が続くと酒が出ていた。
「あいよ、兄ちゃんたち。なんか食うかい?」
「んじゃァ、おすすめのやつ何個か頼む」
高杉が答える。
サカズキは二つでてあった。それに高杉は酒を次ぐ。

小さく感謝の言葉を吐く。そしてまたおでんがでても二人の無言は続く。
おじさんはイヤホンをし大音量でなにかを聞いていた。

酒を何杯か飲む。先に沈黙を破ったのは高杉だった。

「てめェ、銀時となんかあっろ」
酒を飲んでも高杉はいつもと変わらない口調で話しかける。桂は意外に酒に弱く、さっきより警戒心を緩めた。

「なんで知っ…」
「聞いてやるぞ」

高杉の優しさだった。
酒の弱い桂に自然に酒を飲ませ、己のなかに溜め込んでいるものを吐き出させるための。

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