brillante 「アフロディーテ、アフロディーテ。起きて頂戴、アフロディーテってば…。」 自分の名前を呼ぶ凛とした声。名を呼ばれても未だ微睡みから浮上出来ずにいるアフロディーテを、ゆさゆさと揺さぶり始めるのは少女の小さな手。視界に映ったのは白。 「…アテナ?」 「ああ漸く起きてくれましたね。」 意外と貴方は覚醒するのに時間が掛かるのね…と、少女…もとい我等が女神アテナは小さく笑っていた。 「先程はお見苦しく、アテナにはご迷惑をお掛けし失礼致しました。」 「いいえ。私の方こそシエスタ中にごめんなさいね。」 ソファにアテナを座らせアフロディーテは彼女への紅茶を手際良く淹れていく。 昼寝の時に着いたのだろうか。アフロディーテの巻き毛にはどう見ても明らかな寝癖が、ぴょこんと立っている。何時も完璧な魚座の麗人にあんな可愛いらしい寝癖がついているのが微笑ましくて。アテナはアフロディーテの後ろ姿を見ながら静かに、声を潜めてくすくすと笑っていた。 そんなこととは露知らず。アフロディーテはにこにこと何処かご機嫌なアテナへ紅茶とお菓子を差し出す。 「それでアテナ。貴女自らお越しになるとは何か重要な案件でも…?」 「そうですね…。ある意味重要な案件ですね。」 でもアフロディーテが考えている様な物騒なものではないとアテナが制する。 「では一体…?」 「お誕生日。」 「…はい?」 「昨日でしたよね?貴方のお誕生日は。」 「あ…はい。」 「間に合わなかったけれど、改めて祝わせて。お誕生日おめでとうアフロディーテ。」 「有難う御座いま……まさかアテナ!態々私にそれを言う為に此方に!?」 「あら、いけなかったかしら?」 「め、滅相も御座いません。ですが、アテナ御自らお越し頂かなくとも一言お呼び頂ければ…。」 「私が来たかったから来たのです。だからそんなに畏まらないで。ね?」 にこやかに話す女神様に、アフロディーテは失礼と思いつつもはぁ…と溜め息を溢した。 「アテナ…貴女の御身は最早貴女だけのものではありません。」 「えぇ分かっています。だから貴方が護ってくれるのでしょう?」 「それは、そうですが…。」 「アフロディーテの気持ちはちゃんと分かっていますよ。はい。このお話はお仕舞い。」 「いえまだ話しは終わっていな……。」 ソファの陰に隠してあった女神からの誕生日プレゼントは、アフロディーテの髪の様な水色の薔薇の花束であった。 「…"神の祝福"…。」 それは青い薔薇の花言葉の一つ。 「受け取って貰えますね?」 「…お断りする理由は御座いません。有難く頂戴致します。」 良かった。とアテナは微笑み、アフロディーテは女神から花束を受け取った。 「そして此れは"沙織"からです。」 徐に立ち上がった沙織は、何事かきょとんとするアフロディーテの前に立つ。額に掛かる前髪を払い、現れた彼の秀でた額にチュッと可愛らしいキスが送られた。 「Happy birthday Aphrodite.」 「き、恐縮です…。」 アテナからも沙織からも祝福され、アフロディーテは照れくさそうに彼女から視線を反らした。女神の聖闘士としてこれ程誇らしいことがあろうか。感慨深そうにいるアフロディーテに対し、アテナは未だに寝癖がついたままの魚座の麗人を見て更に笑みを深めるのだった。 ―――――――――――― 魚誕ラスト。 アテナに祝福されるアフロちゃん。正直一番これが書きたかった(笑)← |