酔客 今宵は双魚宮にてアフロディーテの誕生日パーティーが盛大に行われていた。 可愛い黄金聖闘士の子達が賑やかに誕生日を祝える…。なんと素晴らしいことか。我等が女神と地上の愛と平和を護り通した全ての聖闘士に、今この時を流れる平和に感謝を。 それから間も無くシオンは書類にペンを走らせ始めた。やらねばならぬ案件が山を作っているのだ。各地に派遣した聖闘士達からの広域偵察任務の報告に次々目を通していく。今後のことを考え、優先順位が高いものから対策案を書き記していると、私室の前に良く知った小宇宙があった。 「…どうしたアフロディーテ。」 今日の誕生日の主役足るアフロディーテがそっとシオンの私室に入ってきたのだ。直接祝う機会が無く、逢えないと思っていた故に、アフロディーテのこの訪問は嬉しいものがあった。 「良いのか主役が此処にいて。双魚宮にはまだ黄金聖闘士達の小宇宙があるぞ?」 「はい。でも皆酔って寝てしまいましたので。」 其々任務やなんだと皆忙しい合間を縫って、頑張って準備してくれたという。それ故に疲れが溜まっていた者達はわっと騒いで、あっという間に寝てしまったらしい。 片付けもそこそこに、教皇の仕事で来られないシオンに会い来たのだとアフロディーテは綺麗な微笑みを浮かべて言った。 「全く…可愛い魚よな。」 ペンをインク瓶に浸けてシオンはアフロディーテへと静かに歩み寄る。すすす…とアフロディーテも音を立てずシオンに近付いて、大きく拡げられたシオンの両腕。その胸の中に飛び込んだ。 「アフロディーテ誕生日おめでとう。」 「…有難う御座います。」 ぽんぽんと幼子をあやすように背中を軽く叩く。 「折角だ。何か望みはあるか?」 「望みですか?」 暫し己の中で思案するアフロディーテ。 「…あの、あなた様がお忙しいことは百も承知です。」 「心配無用よ。」 あれくらい直ぐに片付く…と心配するアフロディーテを、安心させる様に彼の鼻筋に口付ける。 それからまた口を噤んでしまったアフロディーテは、やがてその美貌を上げると、真っ直ぐにシオンを見詰め小さい声で望みを囁いた。 「……抱い、て…下さい…。」 「ふっ…本当にお前は可愛い奴よの?」 「…ん、ぁ…。」 恥ずかしげに俯くアフロディーテの艶やかな唇に口付ける。身体に染み付いた薔薇の香りに混じって、咥内は微かワインの苦く甘い味がした。 この魚もまた少々酔っている様だ。成る程。ならば先程の様にストレートに誘ってくるのも頷ける。まあ、たまにはこんな酔った魚も良いものだと、シオンはアフロディーテを誘い奥の寝室へと消えて行った。 ―――――――――――― 魚誕そのさーん。 大羊魚が好き過ぎる…(突っ伏) 本当マイナーにも程があるよ自分。でも好きなんです← |