Roses querida

 青天白日。雲一つない澄み渡った青空の下。アフロディーテが管理する魔宮薔薇を初めとした、様々な薔薇が咲き誇る庭園にまだ冷たい風が吹き抜ける。しかしその寒さを吹き飛ばす様に彩り鮮やかな薔薇達は元気よく咲いている。
 その一つ一つを確認しながらアフロディーテは何時もの管理作業をこなしていく。そんな中で、さわさわとにわかに薔薇達が騒ぎ出す。何事かとアフロディーテが顔を上げた時、庭園の入口に立つ人の姿。
「シュラ。」
 キョロキョロと自分を探していたシュラが片手を上げて此方に近付いて来る。幸い、今此処に咲いている薔薇達は無毒だ。迎えに行こうと思ったが、何と無く此処でシュラを待っていたかったのでこのまま立っていよう。アフロディーテはぱたぱたと土埃を落として、シュラを待った。
「休暇楽しんだかい?」
「ああ。」
「…で?その手にしているものは?」
 隠すことなく右手に持つもの。…花束だ。
「誕生日おめでとう。」
「君から花束なんて…想像していなかったな。」
「あぁ。自分でも柄じゃないし、似合わないと思ってる。」
 謙遜するシュラにそんなこと無いよ、とアフロディーテは11本の赤い薔薇の花束を受け取りながら言った。
 特にアフロディーテが何か欲しいとか言っていなかったし、かといって誕生日に何も贈らないというのも失礼な話になる。真面目なシュラはそう思い、考えれば考えるほど何を贈れば良いか分からなっていた。
「そしたらそれが目に留まったんだ。」
 薔薇=アフロディーテ…なんて、安直な考えだと思った。薔薇も双魚宮の庭園に行けば幾らでも咲いている。大半は女神を護る為のものなのだが……。
だけど、やっぱりこれしかないと思った。
「来年はもっと気をきかせたものを……。」
 ざあっと一際風が強く吹いた。それと同時に重なる唇。触れるだけのキス。謝る必要なんて無いのだと、アフロディーテはシュラの言を制した。
「有難うシュラ。」
 唇を離し春の陽射しの如く、柔らかく綺麗に微笑むアフロディーテを見て、敵わないな…とシュラも笑う。
 腕を伸ばしてアフロディーテを抱き締める。君の服が汚れるとか、折角貰った薔薇が潰れるとか耳元でぎゃいぎゃい騒がれる。
 そんなに強く抱き締めてはいないぞ?と逃げ道を示すと、意地悪。馬鹿。と悪態をついてアフロディーテは遂に大人しくなる。薔薇の花束を胸に暫くの間、アフロディーテはシュラの腕の中に収まっていた。

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赤い薔薇(熱烈な愛、他)
11本(最愛)

魚座誕そのにー。

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