緋色あわわ

 日に日に聖域にも春めいた風が吹く様になった昼下がり。昼食を終えたアフロディーテは午前に引き続き、庭園の管理作業を行う為に私室を出て、石造りの双魚宮の回廊を歩いていた。
「よう。」
 一本の石柱の陰からヒラリヒラリと振られる手。
「何だ、君か。」
「随分な言い方じゃねぇか?」
 酷ぇなあ…と言う割りに、柱の陰からひょいと出てきたデスマスクは特に気にした風は無かった。何時もと同じ。人を食った様な、それでいて幼い時のクソガキ時代の何か企んだ様なそんな表情。
「何を隠している?」
 本当に何か企んでいるらしい。柱の側から動こうとしないデスマスクに、アフロディーテは柳眉を潜めて訝しむ。あの隠された右手に何があるとあるというのだろうか。
「別に隠すつもりは無かったんだけどよ?」
 思いの外タイミングが合わなかったと、自らの運の無さにデスマスクは何やら後悔している様だ。本当に何事か。今度は小首も傾げてアフロディーテはデスマスクの用事を催促する。
「君の後悔は後にしたまえ。で、用件があるならさっさと…。」
 アフロディーテが言い終わる前に、彼の眼の前に赤…否、これは緋色。緋色の薔薇が広がった。突然の花束贈呈に目に見えてうろたえるアフロディーテを見て、デスマスクはしてやったりと声を上げて笑っていた。
「わ、笑うなっ!?」
「いやぁ、思いの外良いリアクションだったもんでな…ククッ!」
「こんなこと突然されたら驚くに決まっているだろうがっ!」
「お前にそーゆー顔させたかったからな。だからこの方法を選んだんだよ。」
 ほら、と改めてデスマスクから手渡される緋色の薔薇の花束。かなりのボリュームがある。このレベルだとざっと100本はあるだろうか。
「誕生日おめでとう、アフロディーテ。」
 緋色の100本の薔薇の花束。その意味を理解してか、アフロディーテの顔は少々赤くなっていた。
「…君はいつだって回りくどいな。」
「そこ悪態つくとこか?」
「煩い。」
「それにこれ直接言ったら怒るだろうが。」
「君だって直接言ったら恥ずかしいだろうしな?」
「うっせ!」
「…デスマスク。」
「あぁ?なんだよ?」
「……有難う。」
「へへ、どういたしまして?」

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緋色の薔薇(情事・灼熱の恋)
100本(年老いても共に)

魚座誕そのいちー。
アフロちゃん本当におめでとうー!

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