祟り目

 今朝は教皇宮に上がっての執務である。面子は何時ものシュラとアフロディーテと俺の三人だ。大体三人で執務となると立地上アフロディーテが先に来て書類仕事をしているのだが……。
「アフロディーテの奴どうしたよ?」
「まだ来てないのか?」
 三人分の飲み物を淹れて戻って来たのはシュラで、デスマスクは彼から自分のカップを受け取った。定時を過ぎても現れないアフロディーテに、シュラも彼が出勤しないことに疑念を抱き始めた様だ。具合が悪い等は聞いていないし、何かあったにしても必ず連絡をしてくる筈だ。
 先程から小宇宙通信をしているがアフロディーテが応じる気配は無い。時間が経てば経つほど、柄ではないがいよいよアフロディーテのことが心配になってきた。
「デスマスク何処に行く?」
「アフロディーテんとこ。…なーんか嫌な予感がすんだよなぁ…?」
 悪い勘程良く当たるとは言ったもので、なんぞ良くないことがアフロディーテの身に起きている様だと蟹座の勘が言う。それに対しシュラも同行する。と、二人が執務室を出ようとした時だった。
「ぎゃぴぃっ!?」
「うおっ!?」
「むっ!?」
 執務室の入り口で縺れ合いその場にドタドタと倒れ込む黄金聖闘士三人。官吏や他の黄金聖闘士に見られなくて何よりである。
「痛ってぇ〜…なんだよ、来るならさっさと来いよなこの魚……あ、アフロディーテっ!?」
「お前!どうしたんだそれ!?」
 デスマスクとシュラが見たもの。なんとアフロディーテの頭部には猫耳、更には尻に尻尾まで生えているではないか。
「あぁ、今朝起きたら生えてた。」
 本人はさして気にしていないと言う風に、アフロディーテは実にあっけらかんと言った。


 アフロディーテが遅刻した理由はこの猫耳と尻尾をどうしたものかと悩んだからだそうだ。こんなもの、生えたらアフロディーテでなくとも何とかしようとするだろう。
 何より神聖な教皇宮、はたまたアテナが逐わす神殿に続くこの場所で、得体の知れぬ猫耳と尻尾が生えた状態で上がるのは憚られる。なんとかしようとあれこれアフロディーテなりに手を尽くしたらしいが、引っ込むどころか抜けもせず、最初から生えてましたよとばかりに存在する猫耳と尻尾を見て思った。
 もしかしたら今日だけ生えているのかも知れない。いや今日は無理でも何日かしたら引っ込むかも知れない…というかきっとどうにかなる。ぶっちゃけた話、猫耳と尻尾があっても今のところ不便を強いられてはいない。ボトムスと下着に尻尾を通す為の穴を開けたが、そんな事はアフロディーテの考える不便には入らない。また買えば良いだけの話なのだから。
 そんなこんなで教皇宮に来たのだとデスマスクとシュラは、アフロディーテから説明を受けたのだった。
「お前なんでそんなに楽観的なの?」
 どう見ても聞いても普通のことではないとデスマスクは苦虫を噛み潰したかの様な表情を浮かべていた。シュラもデスマスクの言葉に頷く。しかしシュラの手はアフロディーテの猫耳にもふもふ触れており、事の重大さを理解している割りに、この行動は理解出来なかった。当の本人たるアフロディーテが楽観的過ぎるのも影響しているのだろう。もう少し危機管理をして欲しいものである。
「む。感覚としてはペルシャに近いか…?」
「もうシュラ擽ったいってば。」
「なあ、お前等解決しようとする気ある?」
 デスマスクの心配を余所に、アフロディーテの猫耳と尻尾は翌朝綺麗さっぱり無くなっていたという。

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