ハウライト

 夜通しアフロディーテは黒いサガに抱かれていた様だ。
 その白く美しい裸体からは染み付いた薔薇の香りではなく、精液のあの独特な青臭い匂いが纏わりついていた。散々弄ばれたであろう蕾からは夥しい量の精液が溢れており、88星座随一と云われるその美貌にも目が当てられぬぐらいに大量に掛けられた白濁がべったりと付着していた。
 全身を精液に塗れさせたアフロディーテは宛ら白濁の海を浸かっているかの様だ。
「さっさと連れていけ。」
 今まで散々アフロディーテの身体貪っていた割りに、黒いサガは情事が終わるとアフロディーテを邪険にしだす。自分でそうさせたのに、まるで穢らわしいものを見ているかの様な威圧を湛えた目がベッドに横たわるアフロディーテを見下ろしていた。
 デスマスクが黒いサガに呼ばれた理由は、ずばり彼に性欲処理として抱かれたアフロディーテの事後処理だ。何を思い、この黒いサガはデスマスクにやらせるのか……理解出来なかった。
「…御意に、教皇サマ。」
 この事について色々言いたいことは有るが今はアフロディーテを彼から解放させてやるほうが先だ。流石に裸体のまま連れていくには忍びない。気持ち悪いだろうが同じく白濁に塗れたシーツで身体を包んでからアフロディーテを抱き抱え寝室を出ていく。
抱えて気付く。熱いと勝手に思っていたアフロディーテの身体は冷たかった。


 気が付くと温かい何かに包まれていた。理解するのに少し時間は掛かったが自分が今風呂の中にいるこのだと気付く。いつも好んで入る温めの温度だ。一体誰が…情事の後の覚醒仕切らない頭で考える。
「まだ寝てろ。」
 大きい手のひらが目元を覆ってきた。暗い。この手は良く知っている手だ。彼の名前を呼ぼうとしたが、それは叶わずアフロディーテは再び睡魔に連れ去られた。

 眩しい陽光に照らされてアフロディーテは漸く覚醒する。右手をずらすと、隣で誰かが寝ていた形跡があった。しかし今寝ていた誰かはいない。その事に少しだけ寂しさを覚えた。欲を言えば朝…自分が起きるまで隣にいて欲しかった。
 身体はやはりというか、あの人に抱かれた翌日は何時も怠くてしんどくて、起きるのも億劫なくらいだ。しかし自分にはやらねばならない事がある。ギシギシと音が鳴るのではないかというぐらいに、ぎこちない動きをしながらアフロディーテはベッドから起き上がる。
「おう、おはようさん。」
 勝手に冷蔵庫のもの使ったから、と何時もと変わらない笑みを浮かべて幼馴染みはフライパンを振っていた。
「お前冷蔵庫の物、賞味期限ギリギリばっかじゃねえか。ちゃんと使っ…うおっ!?」
 後ろから抱き着かれて変な声――それ、私の持ちネタだぞ?――を上げるデスマスク。火を使っていているから危ないと語気を強めるもそこは器用にいなして調理を進めていく。
「昨日は済まなかった…。」
 デスマスクに事後を委ねた事は昨日の一度だけではない。もう何回目かも忘れる程に、彼には面倒を掛けている。
「気にしてねぇよ。さっさと顔洗ってこい。朝から目腫らしてたらシュラが煩せぇし、何より折角の美人が台無しだぞ?」
「…余計なお世話だ。」
 それなのに、幼馴染みは何時もと変わらず笑ってくれる。もう一人の幼馴染みもそうだ。だから余計に甘えてしまうのだろう。もう少しだけこの優しさに縋っていたかった。

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13年間の暗っらい話。
蟹座さんは他人はどうでもいいけど気を許した身内には優しいっていうのにときめいた←

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