エンジェル・キス

 ふと、急に触りたくなった。本当に何とはなしにアフロディーテの唇に触れてみたくなった。
 アフロディーテが寛いでいるソファへ座ると、「どうかしたかい?」と小首を傾げて問い掛けるアフロディーテの髪の毛をくしゃくしゃに撫でてやった。それから柔らかい頬を撫でてから、手を滑らせ顎に指をかける。少しだけアフロディーテの顔を上げさせた。
 その辺の女顔負けの長くてくるりと上を向いた髪の毛と同じシアンの睫毛が影を作る。序でに左目の下の泣き黒子がこいつの色気を更に引き立てている。扇情的とは正にこのことを言うのだと思う。はっきり言って質が悪い。青い睫毛に縁取られた目は涙で潤い硝子玉の様なアクアブルーの瞳が静かに俺を捉えて離さない。
「デスマスク?」
「ちょっと黙ってろ。」
 アフロディーテが再び口を開ける前に唇に親指を這わす。濡れているかの様にしっとりとしていて、思っていた通り……いやそれ以上にアフロディーテの唇は柔らかかった。右から左に。今度は反対に指を滑らせる。ふにふにと押してデスマスクがその感触を楽しんでいると、皮膚が薄い唇に触れられているからか、擽ったそうにアフロディーテが顔を背けてデスマスクの手から逃げる。些細な動きでもアフロディーテの髪の毛からは薔薇の香りがふわりと香った。
「もう、なんなのだ急に。」
「…なあ。」
「質問には答えたまえ。」
「今度は指じゃなくてよ……キスしてぇ。」
 触るだけじゃ足りなくなってしまった。
「…キスだけで良いのか?」
「おっなんだぁ?その先をしても良いってか?」
「私をその気にさせられたら、な。」
「言ったな?後悔すんなよなアフロディーテ。」
 向き直って再度確認。やっぱしこいつは全てが綺麗だ。
 挑発的な笑みを浮かべたアフロディーテの唇に、デスマスクは噛み付く様に唇を重ねた。



2/2はくちびるの日と聞いて滾った結果。
エンジェル・キスのカクテル言葉は「あなたに見惚れて」

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