Avere un bel sogno 暗い闇の中で目を覚ます。嫌な夢を見た気がする。内容を覚えていないその程度の夢だが、それでも心臓の動きを速め嫌悪感を抱かせる程に不安を掻き立てるものだった。 ゆっくりと深呼吸を繰り返していると、背中を向けて寝ていたデスマスクがアフロディーテの様子を察してころりと寝返りを打つ。 「…起こして済まない。」 「気にすんな。」 「少し寄って…良いかい?」 特に返事は無かった。けれどこれがデスマスクの肯定だとアフロディーテは知っている。もぞもぞとデスマスクのほうに移動して、彼の胸板に頬を擦り寄せる。巻き毛が当たって擽ったそうにしながらも、デスマスクは黙ってアフロディーテのしたい様にさせる。 「寒くねぇか?」 「…うん。大丈夫暖かい。」 デスマスクの温もりを感じるのと同時に彼の心音を聞く。人が生きていると感じる事が出来る鼓動に、人が安らぎを覚えるのは母胎にいた時の記憶があるからだろうか。 暫くデスマスクの心音を聞いていたアフロディーテがうとうとし出したのを見計らって、デスマスクはアフロディーテの左目の泣き黒子に優しくキスを施す。 「…デスマスク…?」 「いるよ。」 「…うん…。」 「だから、安心して寝とけ。」 「………ぅ…ん……。」 アクアブルーの目が完全に閉じられ、規則正しい寝息が聞こえてくる。 幼い頃からアフロディーテの夢見が悪いことをデスマスクは誰より知っている。アフロディーテが聖域に来る前の生活がどんなものかは知らない。だが少なからず幼少期の出来事が関係しているのも在るのだろう。一時期は君が積尸気を操るからだ!なんて八つ当たりをされた時もあったなと思い出して、デスマスクは小さく笑った。 「…おやすみ。」 今度こそ良い夢を。抱き寄せたアフロディーテにもう一度キスをして、デスマスクも目を閉じた。 夜に強い蟹。夢見が悪い魚。 |