miel

「先日は氷河が世話になった。」
 双魚宮のリビングに通されたカミュは律儀にそう言ってアフロディーテに頭を下げた。
 カミュが弟子である氷河に宝瓶宮の守護を託し、任務に赴いていたのはつい一週間前のこと。
 氷河も水瓶座の黄金聖衣に認められ彼の加護がある。年若いながらも数々の死線を超え、実力も鑑みても黄道十二宮が一つ宝瓶宮を守護するには充分であった。とは言え今代、水瓶座の黄金聖闘士は女神の慈悲深い愛により復活を果たしたカミュのままである。故に可愛い弟子に任せるのは少しばかり心配だったらしい。氷河のことを信頼しているから、尚更気が気で無かったろう。
「君が思っている以上に氷河は立派に務めを果たしていたよ。」
「貴方や他の皆に迷惑を掛けてはいなかったか?」
「そりゃ慣れないことをしたからね。でもそれは問題ではない。誰しも初めてのことに不安を感じ戸惑う…それが当たり前だ。君だって聖域に来たときは不馴れなことばかりで不安だったろう?」
 ティーカップを傾けるアフロディーテに、カミュは幼い頃を思い出してそして小さく頷いた。
「そんな子の面倒みることは先達者としては当然。まあこのへんのことは弟子を育てた君のほうが良く理解していると思うけど…。」
「…いや。私もまだ完全に答えを見つけた訳ではない。未だにこれで良かったのかと思う時がある。」
「余り気にしないことだね。君も存外考え込む様だから。」
 これから氷河や、他の青銅聖闘士がどうなっていくか……楽しみにしていようではないか。あの子達はまだ若い。道を間違えそうになったその時に、導けば良い。
「ところで、任務のほうはどうだった?」
「それこそ心配いらない。万事恙無く。」
「だろうな。」
 自分から聞いて起きながら、アフロディーテは何も心配していなかった様だ。何故かそれにカミュは少しだけ寂しさを覚える。
「アフロディーテ。」
「なんだい?」
「私は未だに貴方が任務に向かうと心配だ。」
「後輩の君に心配されるとは…私もまだまだの様だな。」
 違う。そういうことではないのだ。そんなカミュの心情を察したアフロディーテはふっと笑った。
「カミュ。」
「……?」
「甘えたいのなら甘えて良いのだよ。」
 椅子から立ち上がるとアフロディーテはソファへと移動する。おいで、と手招きされてカミュもまた椅子から立ち上がりアフロディーテの隣に座り、アフロディーテへと抱き着いた。
「ふふ、昔みたいだな。」
「……少しだけこのままでいさせてくれないか。」
「うん。分かっているよ。」
 誰だって誰かにこうして抱き締めて欲しい時がある。それは水瓶座のカミュという黄金聖闘士だとしても、同じく誰かに縋り付いても良いのだ。
 水瓶から流れ落ちる流水の如く真っ直ぐなカミュのテールグリーンの髪の毛を優しく梳いてやりながら、アフロディーテはそんなカミュに目を細めた。



アフロちゃんは面倒見が良いと信じて疑わない←
カミュさんは不器用じゃなくて解りにくいのだと思う。

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