さくらラララ

「デスマスク、私だ。」
 夜勤明けによる疲れと、その後に煽ったアルコールのお陰で今朝は見事なまでの二日酔い状態。さあシャワーでも浴びて、今日の休日を謳歌しようと考えていた矢先の来客であった。巨蟹宮の勝手を分かりきったアフロディーテは真っ直ぐにデスマスクのいるリビングへ入ってきた。ソファーに転がっていたデスマスクを見るなり、眉間にシワを寄せる。
「そんな顔すんなよ。折角の美人が台無しだぜ?」
「君は毎回毎回…何度同じことを言えば学習するのかね?」
 腐れ縁故に発せられるアフロディーテの言葉は棘だらけだ。
「別にお前の身体が悪くなる訳じゃないだろう?」
「確かに君の言う通りだ。君が肝臓を壊そうが私の知った事ではない。しかしそれでは黄金聖闘士として示しがつかない。」
「俺はそんなに誇り高く黄金聖闘士をやってるつもりもねぇけど?」
「…またそうやって君は…。」
 アフロディーテの艶やかな唇から小さくため息が漏れた。どうしてこうもデスマスクは天の邪鬼なのか……まあ、こちらの忠告を素直に聞いて実行するデスマスクもそれはそれで気味が悪い話ではあるが。
「で?朝っぱらから用事か?」
「そうだが…まず君はさっさとシャワーを浴びてその寝惚けた顔をシャキッとさせて来い。話はそれからだ。」
「一緒に入ら……。」
「三秒以内に風呂場に行かないとピラニアンローズだぞ?」
 この世のものとは思えない、とんでもなく美しい笑顔を浮かべながら、アフロディーテは左手に小宇宙を集め黒薔薇を作り出す。
「直ぐに入ってきます。」
 デスマスクは風呂場まで光速で移動した。時間は三秒も掛からなかった。


 シャワーを浴びさっぱりと先程より晴れやかな表情をして上がってきたデスマスクは、目を見開き、そしてタオルをぼっとりと落とした。
 変わり果てた自室に咲き誇る桜色の薔薇、薔薇、薔薇…。幾つ咲いているか分からないが大量の薔薇が咲いている。いや咲き乱れていると言っても良い。そして広がる甘ったるい匂いに思わず顔をしかめる。そんなデスマスクの目の前で、神話の女神の名を関すアフロディーテは、巨蟹宮のこの様相を見て満足げに微笑んでいた。
「なんじゃこりゃあああああぁぁぁッ!!!???」
 そして絶叫。
 抜けきらないアルコールも手伝った興奮により、小宇宙も高まってしまったせいで隣近所から揃って「煩い!!」と怒られてしまった。自分のせいだが、この元凶は自分のせいではない。全くもって理不尽である。
「何してんだよお前はっ!?」
 デスマスクが怒鳴るが、アフロディーテは漸く上がってきたかとデスマスクに悪態を付いた。
「もう一度聞くぞ!?お前は俺の部屋で何してんだよ!?」
「これは私からの贈り物だ。」
 そしてこれがアフロディーテの用事だと言う。怒りを通り越してしまったデスマスクはあっけらかんとして、アフロディーテそんな彼を見てまた微笑む。
「私から君へ、999本の桜色の薔薇を。」
 何故に999本?そして何故桜色なのか……クエスチョンマークを浮かべて考えるデスマスク。全くもってさっぱり意味が分からない。確か薔薇を人に送る時には、その本数や色で意味が変わるという。それは知っている。アフロディーテが言っていたから。
だからと言ってデスマスクは巨蟹宮内に咲いた999本の桜色の薔薇の意味が分かる筈もない。そして、目の前のアフロディーテが素直にその意味を教えてくれるとは、デスマスクには道程思えなかった。
「意味は自分で調べたまえ。」
 案の定アフロディーテが意味を教えてはくれなかった。そしてくるりと振り返ると、そのままリビングを出て行ってしまった。嗅ぎなれた水色の髪の毛に染み付いた薔薇の香りと、巨蟹宮に咲く桜色の薔薇は違う香りだった。二つの甘ったるい匂いに、いい加減胸焼けを起こしそうだとデスマスクはアフロディーテの背中に悪態を吐いた。
「…何なんだよ…本当。」
 手近な桜色の薔薇を一輪手に取る。棘はきちんと処理してある。柔らかそうな花弁はしっとりとしていて、思いの外手触りが良かった。
 デスマスクはテーブルに桜色の薔薇を置くと素早く私服に着替えて、再びその薔薇を手にリビングを後にする。その意味を知る為に。このままやられっぱなし癪だ。アイツだけが知っていて、自分が分からないと言うのは良い気がしない。この薔薇の色と本数に、そこになどんな意味が示されていても、自分は知らなければならない。
「…双魚宮、だな。」
 デスマスクは999本の桜色の薔薇に見送られて、巨蟹宮を後にした。



アフロディーテがデスマスクに贈るのは999本(何回生まれ変わっても変わらない愛)のさくら色のバラ(誇り)です。
https://shindanmaker.com/296990

で、良い夫婦の日に合わせ様として結局間に合わなかった…orz
魚介まじ夫婦(真顔)
逆のやつもあるので書きたい。

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