プレッツェル

 アフロディーテが街からの買い物帰りに、金牛宮を通り過ぎ様とした時だ。香ばしいクッキーか、或いはビスケットの香りが宮内中に漂っていた。珍しいと思ったのがアフロディーテの率直な感想。そしてこれまた珍しくアフロディーテはアルデバランの居住スペースに足を向けるのだった。

 不器用なところは不器用だが、アルデバランにも勿論器用な部分はある。
 例えば料理。料理と言えば蟹座のあいつが群を抜いて上手いのだが、しかしこう見えてアルデバランも結構料理が上手なのである。あの大きい手でウサギ形のリンゴ(星矢達が教えた)とか、人参を使って花形の飾り切り等見事な細工をしてみせるのだ。
 恐らく黄金の中では一番心根が優しいアルデバランだから、そういった部分にも彼の性格が出るのだと思う。
 その大きなアルデバランが先程から作っているものを、アフロディーテは興味深げに眺めていた。
「ポッキー…と言ったかな?なんで急に作ろうなんて思ったんだい?」
 先日瞬から貰ったお菓子を思い出しながらアフロディーテはアルデバランに尋ねる。ロドリオ村の子ども達に何かお菓子を強請られたのかと問うと、違うんだとアルデバランは首を振った。
「ただ単に作ってみたくなったのだ。」
「ポッキーを?」
「うむ。因みになアフロディーテ。この菓子の名前、正確にはプレッツェルと言うのだそうだ。」
 アフロディーテが呼ぶそれは日本でのお菓子の俗称らしい。
「酔狂だと笑うか?」
 大きな手がプレッツェルにチョコレートを潜らせていく。網目に引っ掛けて余分なチョコレートを落とし、あら熱を取って徐々に冷ましていく。
 不器用だけど器用な優しい牡牛座は実に楽しそうにお菓子を作る。
「…いや。君がそうしたくてやっている事を、私には笑う権利なんて無いよ。」
 良いじゃないか物好きで。誰かしら何か物好きな部分がある。
 そうか。と、アルデバランは愛嬌のある笑顔を浮かべた。

 再び十二宮を上り始めたアフロディーテの手には、買い物の品の他にアルデバランから出来上がったばかりのプレッツェルがあった。



牛さん不器用そうだけど、器用そうだなって。
牛魚って個人的にほのぼのしててスッゴい可愛いCPだと思うんだ(病)

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