ニワトコ

 春先のアフロディーテは何故か体調を崩しやすい。魚座の性である毒物耐性がこの時期になると、どういう仕組みか分からないが身体の調子を狂わせるらしい。風邪を引くとかならばまだ良いほうで、それよりも厄介なのは耐え難いほど沸き上がってくる性欲だ。別にその処理をさせられることについては不満はない。こっぱずかしい話だが恋人なんだからセックスするくらいなんてことなくて、寧ろ役得位に思っている。下手にシュラとか他の黄金とか、その辺の兵と行きずりされるよりはずっとマシだ。
 そんなこんなで双魚宮のアフロディーテの寝室にいる。扉を開けるとアフロディーテは頭からシーツを被り壁側を向いて丸くなっている。今朝見たときと変わらない寝姿だ。起きた形跡はどこにも無い。朝に作った食事にも手をつけた形跡は無く、すっかり冷めてしまっていた。この状態では庭園の管理も出来ていないのだろう。それほどまでに今回の発情具合は深刻らしい。
「よぉ、大丈夫か?」
 ピクリと白い山は微かに揺れた。しかし揺れただけ。
「変に我慢しなくて良いんじゃねぇの?」
「……だって、それだと。」
「迷惑なんかじゃねぇ。……何べんも言わすな。」
 いつもは晩御飯はこれが良いとか我が儘を言うくせに、こういう時には迷惑が掛かると遠慮しやがる。普通逆だと思うが、アフロディーテ自身に関する大事なことは何かと一人で背負子んで一人で解決しようとしてきた。人に頼りたくない、というのは分からないでもない。俺もそういうのはめんどうだし、俺も一人でやってきた。……だがこいつは面倒臭いとかいう位置にはいないのだ。
さっきも言ったがアフロディーテとは恋人だ。いや、ただの恋人なんかじゃない。もっと複雑で他のものと混ざりあった……なんというか言葉じゃ言い表せないそういう関係なのだ。自分達は。
「な、にを……。」
 剥がしたシーツの中から出てきたアフロディーテは困惑しているが、やはりと言うべきかそれなりに期待をしている様であった。撫でる紅潮させた頬は火傷をしそうなくらい熱い。
「ッ…。」
「ほら、口…開けな。」
 キスが出来ないと伝えると、限界だったのだろうアフロディーテは、直ぐ様、自分の首に腕を回し唇を重ねてきた。
「…本当に君には迷惑を……。」
「気にすんなって。」
「……ごめん。」
「もう良いって。…ほら。」
 もう一度、唇を重ね合わせた。

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ニワトコの花言葉は「私の苦しみを癒す人」

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