可愛いの境界線

 双魚宮の庭園。日当たりの良いところに設けられたガーデンテーブルと椅子で、アイアコスは出された紅茶と菓子を摘まみながら庭園をぼんやりと眺めていた。赤は勿論、この時期盛りの薔薇達が彩り豊かに咲いていて綺麗である。どちらかと言えば花より団子派なのだが、アフロディーテが面倒を見ている薔薇達だからか不思議と違って見える。
クッキーを摘まみながら近くの薔薇を見ていると、奥で作業をしていたアフロディーテが戻って来た。一服しに来た訳ではない様で、直ぐ近くの薔薇の手入れをし始めた。
「アフロディーテ。」
「ッ…驚かさないでくれるか?」
 突然隣に現れたアイアコスに、アフロディーテはジトリ…と睨み付ける。神速を誇るガルーダにとってはこの位の距離を移動することは簡単だ。それは光速で翔る黄金聖闘士であらアフロディーテも分かっているだろう。しかし人間誰しも不意討ちには弱いものだ。泥だらけの美貌はまだ少し動揺に揺らいでいる。
「…可愛いな。」
「君はどうしてそうやって直ぐ…。」
 今度は呆れた様な表情を浮かべるアフロディーテに、アイアコスは首を傾げる。彼からすれば率直な感か想を言っただけだ。ただ男に対して可愛いは確かに微妙かも知れない。しかし可愛いの代わりに何といったら良いのか分からないのも事実。
「で、何かあったのかい?」
「…あぁ、休憩しようって言いに来たんだ。俺が来てからずっと作業してるだろ?」
「この位平気……って、ちょっ…!」
 返事を返す間もなく、アイアコスに引っ張られ紅茶とたくさんの菓子が置かれたテーブルと椅子のところまで戻される。そして座らせられた。
「…そもそも、誰のせいで忙しなく管理作業をしているか分かるかい?」
「これ、俺のおすすめなんだけど…。」
「話は最後まで聞きたまえ!」
「だって、あんたの中気持ち言いし…。アフロディーテだってもっとってねだってたじゃな…。」
 瞬間的にだが、アフロディーテの小宇宙が馬鹿みたく高まったところでアイアコスは漸く口を閉ざした。美人は怒らせると怖い……デスマスクが言っていた通りである。これ以上アフロディーテを怒らせれば、ある意味聖域にも冥界にも迷惑が掛かるだろう。痴話喧嘩で騒ぎを起こした等と双方から騒がれたくない。
「ごめん。」
「分ければ宜しい。」
 そういうとアフロディーテは席を立ち、先程の場所に戻って行った。
「こわ…。」
 だがそんな気の強いところもまた、アイアコスに言わせれば可愛いのである。

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で、この後一緒に土いじりすると(笑)

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