充電 自分が出したくしゃみで目が覚める。ちゃんと被った筈のシーツは、水色の魚に全部持っていかれていた。シーツも無しに半裸で寝ていてはくしゃみの一つや二つ出ても仕方無いのかもしれない。 シーツぐるぐる巻きで、更に身体を丸めて眠っているアフロディーテに手を伸ばす。くしゃりと髪を撫でて、昨夜自分で乱した髪を手櫛で直していく。 「…アイオリア?」 「起こしたか、済まない。」 「だいじょうぶ、だよ…。」 まだ寝惚けているのか舌っ足らずなところが愛らしい。年上で男に愛らしいなんて言ったら怒るかもしれない。うっかり出そうになる言葉をアイオリアは飲み込む。しかしアフロディーテが愛らしいのは事実だ。可愛いが専売特許の魚座だからではない。アフロディーテだから愛らしいのだ。 「アーイオーリア。」 「な、に…?」 一瞬言葉に出したかと思ったが違うらしい。シーツの中から出てきた白皙の腕が、日に焼けた首に絡み付く。花に引き寄せられる蝶の様に、アフロディーテに誘われ、導かれた先は艶やかな唇。重ねるだけだったがその時間が長かった。 「……よし、充電完了。」 「じゅ、充電…?」 なんのことだか分からない。今まで充電したことも、されたこともなかった。狼狽える獅子に、魚はこてんと首を傾げながら言う。 「アイオリア、今日から日本だろう?」 「あ。」 そうだ。グラード財団総帥である我等が女神の護衛として、日本に一週間ほど出張するのであった。 「だから充電…。」 「うん。」 「だから、昨日あんなに…。俺のこと…。」 「…うん。」 珍しくアフロディーテから求めて来たのはそういう理由だったのか…。麗人からの誘いに舞い上がってしまった昨日の自分を殴りたい。急に背筋を正してベッドの上で正座する獅子に魚はまた首を傾げる。 「アイオリア?」 「済まないアフロディーテ。俺が間違っていた。」 「うん?」 「一週間寂しい思いをさせるが、俺はきちんとアテナを守り抜き聖域に戻ってくる。」 「うむ。気を付けて行ってr」 「だから…!」 ――充電…させてくれ。 その言葉の後、ギシ…とベッドが派手に軋んだ。押し倒されたアフロディーテは目を白黒させている。 「い、今からするのかっ!?」 「身支度と朝食を光速で済ませれば三回は大丈夫だ。」 「さ、三回だと!? む、無理だアイオリアっ朝から三回もしたら充電どころか、充電過多で私(の腰)が壊れる!!」 「ならば、本当に壊れるか…やってみるか?」 完全に火がついた獅子は、身の危険を感じ暴れる魚の腕を簡単に片手で押さえつける。 「…充電開始。」 その言葉と共に唇を奪われた。 ―――――――――――― こうして魚は美味しく頂かれました。 |