アルボラーダ 澄んだ青空にギリシャの太陽は眩し過ぎる。微睡む暇もなく、目が覚めてしまったアフロディーテはゆっくりと起き上がる。隣で背中を向けて眠っていた蠍が「うぅん…。」と唸って寝返りを打つ。二十歳を感じさせない何ともあどけない寝顔だ。豊かな桔梗色の髪を何度か梳いてやれば、今度はむにゃむにゃと何事か呟いている。生憎と内容は分からないが、良い夢を見ているのだろうとは思う。 つん、となんとは無しに頬肉を何度かつつく。可愛い寝顔にはどうにも悪戯したくなる。浅い眠りから半分覚めたミロは寝惚け眼で、子どもの様にぐずりだす。 「なんだよぉ…?」 「いや、何でもないよ。」 と、言いながらアフロディーテはまだミロの頬をつつく。今度は軽く指で摘まんで、その柔らかな感触を楽しんでいた。 「…うりゃ!」 「わあっ!?」 折角起き上がったのにまたベッドに逆戻り。アフロディーテのちょっかいにより嫌でも覚醒したミロは少し不機嫌そうで、今度は悪戯っ子の様な表情をしている。 「そんなに構って欲しいなら、構ってやる。」 こしょこしょこしょ…と脇腹を擽られ、アフロディーテはその美貌を破顔させて声を上げて笑いだす。 「あああそこダメっ、やんっもうくすぐったいっ! ミロってばぁっ!」 一通り擽られたアフロディーテはぜいぜい肩で息をしながら、ごろんとベッドに寝転がる。ミロはやったと云わんばかりにドヤ顔をして、彼もまたベッドに転がった。 「髪ぐしゃぐしゃだな。」 「誰のせいだい、全く…。」 只でさえ癖っけなのに、今の児戯で水色の髪の毛はあちこちお互いを絡ませながら散らばっている。 「今日はアフロディーテ執務だっけ?」 「うん。ミロは休みだったな。」 本当はアフロディーテも非番であった。しかし急に任務に出ることになったシュラに変わって教皇宮に上がらなければ為らない。 「と言っても半日だけだ。その後は君といられるよ。」 それだけじゃ不満?と言うと、ミロは不満だと正直に答えた。 「ミロのそういう正直なところ嫌いじゃないよ。」 膨れっ面に赤くなる頬。林檎みたいだ、とアフロディーテはまた頬をちょんちょんとつつく。 「では…。」 重なるだけの唇。 「行ってくるよ。」 「いってら…しゃ………。」 くう…と直ぐにミロは眠って仕舞った。元気そうにみえて、やはり彼も相当疲れている様だ。悪戯して悪かっただろうか…と考えていると、そんなことない、とミロの声が聞こえてきそうな気がした。 「…ゆっくりお休み。」 シーツを掛け直してアフロディーテはもう一度ミロにキスを贈る。 ―――――――――――― 午後が楽しみです。 |