グラッド・アイ

 見知った小宇宙。最後に会ったのは夏の終わりかけで、今年彼に会うのは今日が初めてか。
「久し振りだねアイアコス。」
 神速を誇るガルーダは、あっという間に双魚宮につき扉を叩いた。そして我慢の限界だと言わんばかりに早急に抱き締めてくる。アイアコスのディープロイヤルパープルの髪からはエスニックなお香の香りがして、アフロディーテのシアン色の髪からは薔薇の香気が華やかに香った。お互いに焦がれた匂いに胸の奥が熱くなる。
「あー…アフロディーテだ…。」
「なんだいその不思議な感想。」
 確かめる様に何度も抱き締め直して、鼻を利かすアイアコス。そんな彼の背中をぽんぽんと優しく手を置いてあやしていると、またもや見知った小宇宙が二つ。
「急に走り出したと思えば…こういうことだったのか。」
「逢瀬をするのは構いませんが、時と場所は選んだほうが良いですよ。」
「煩い、余計な世話だ。」
 現れたのはアイアコスと同じく冥界三巨頭に名を連ねるラダマンティスとミーノスだ。今回は三人で冥界からの遣いとして聖域にやってきた様で、直接来られなかったパンドラ女史の直筆の手紙とその他諸々を携えての訪問である。教皇宮に上る途中でアイアコスは急に駆け出しここ双魚宮へ立ち寄ったのだと言う。
「時間を取りたいのなら、さっさとアテナと教皇シオンへ挨拶に行きますよ。」
「分かってるって。」
「…はあ。お前こういう外交の時だけ張り切るんだな…。」
 何処か楽しげな天貴星と、気苦労が絶えない天猛星が先に出て、最後に行くアイアコスと軽くキスを交わし合う。
「もっかい…していいか?」
「ふふ、仕方無いガルーダめ…。」
 さっきよりも長く口付けて、少しだけ舌を絡めて離れていく。それが余計に寂しく感じてしまう。アイアコスもアフロディーテも。
「じゃあ、また後でな。」
「…うん。」
 名残惜しげにもう一度手を握ったアイアコスは、先に行った二人と同じく双魚宮を抜け、教皇そしてアテナがいる教皇宮へと上っていった。
「…夕飯、今から作っておこうかな。」
 先の様子だとラダマンティスとミーノスは食べていくか分からないが、確実に食べていくだろうアイアコスの為にアフロディーテはキッチンの冷蔵庫の中身と相談しながら夕飯を思案する。久し振りに来たのだ。少し手の込んだものを作って、大好きなアルコールも出してやろう。
 同い年の癖に、存外子どもっぽく無邪気に笑うあの顔が見たいから。

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グラッド・アイのカクテル言葉は「君にときめいて」

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