相思

 湯から上がるなり、シュラは切羽詰まった様子でアフロディーテを抱き締めた。ここのところ逢えていなかった分、余計に思いが行動に表れる。
「私は何処にも行かないよ。」
 よしよしとアフロディーテは寂しがり屋の山羊を宥める。久し振りに近くに感じるシュラの体温と小宇宙と、そして石鹸の香り。思いを募らせていたのは君だけではないのだよ、とアフロディーテが囁けば、腕の力は益々強くなった。解りやすい反応にアフロディーテはその名に恥じぬくらいに美しく微笑む。
「ん…。」
 どちらともなく重なる唇。互いに舌を絡め会わせていると、不意に舌を巻き取られて吸い上げられる。やわやわと歯で甘く噛まれれば、アフロディーテの口からはくぐもった声音。顔を赤く染めたアフロディーテに、自分しか知らない表情をもっとさせたくなって首筋に唇を滑らす。
「…こら。」
「もう待てん。」
「寝室まで直ぐじゃないかっ。」
 リビングから扉を二枚越えれば寝室だ。久し振りだから尚更ここでは致したくないと目を釣り上げ咎める魚を、山羊は易々と肩に担ぐ。二枚の扉を開け、ベッドに魚を落とすとスプリングがギシギシと悲鳴を上げた。
「んンッ…!」
 ぞんざいな扱いに抗議しようとするアフロディーテの唇を塞ぐ。初めこそ暴れていたが、気持ち良さに次第に大人しくなる。もっとして欲しいとアフロディーテから積極的に舌を絡ませてきて、更に首に白皙の腕が巻き付く。密着度が増すにつれて、甘く濃く香る魔の薔薇にシュラは陶酔していく。
「んっ…ん、ん…ぅッ……ぷ、はぁ…っ…はあぁ…。」
 相手に酔いしれているのはシュラだけではないらしい。深い口付けを交わした余韻に浸るアフロディーテの目は涙で潤みとろんとしている。額に、頬に、泣き黒子に。軽く口付ければ擽ったそうにしながらも受け入れ、自らもお返しだとシュラがしてくれた様にアフロディーテも口付けを返す。
 暫くそうやって戯れを続けた。この瞬間が堪らなく幸福であると感じさせてくれる。愛し、愛されることに幸せを感じる魚座に、こうして自分を受け入れ笑ってくれるから……離したくなくなる。目の前の魚座もそうだと良いのだけれど。
「…何、考えてるんだい。」
「お前のこと。」
「ふふ、嬉しいことを言う。」
「…アフロディーテは?」
「そんなの態々聞かなくても…分かるだろう?」
 勿論、知っているとも。シュラの唇に、艶やかな唇が押し付けられた。
そしてこの後は、言わずもがな。

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いちゃいちゃー。甘過ぎた気もしなくもない←

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