ゆらゆラ

「サガ起きて下さい。…サガってば。」
 アフロディーテがサガの肩を置き軽く揺すってみるが、また徹夜したせいか机に突っ伏したサガはピクリとも動かない。見て貰いたい書類を持って来たのだが、サガが眠ってしまっていてはそれは難しい。同じ教皇補佐のアイオロスにやって貰っても大丈夫なのだが、生憎と彼はアテナの護衛として日本に行って仕舞っている。
どこぞの蟹ならば勝手に書類に判子を押していくだろうが、そういう訳にもいかない。内容を知らせずに教皇であるシオンに回せば、その後はどうなるか……。間違いなくうろたえるな小僧どもと投げられるだろう。
幼い頃の仕置きをトラウマとして思い出し、アフロディーテは軽く身震いをする。
「…どうしたものかな。」
 判子は欲しいが、サガを起こすのことは忍びない。取り敢えず急ぐものではないからサガが起きるまで、若しくはあと一時間はこのまま寝かせてあげよう…と、机に書類を置いた。近くにあったブランケットをサガに掛けると、アフロディーテは長椅子に腰を下ろした。

***

 自分の出した音で、目が覚めた。うっかり執務室の机の上で眠ってしまっていた様だ。徹夜には慣れているのだが、こうして落ちてしまうくらいには疲れているらしい。無自覚もここまでくると恐ろしいものである。自分の下にしていた書類達の無事を確認していると、判子待ちの箱の中には新しく提出された一枚の書類。内容は良いとして一体誰が…と悩む間もなく、視線の先にはこっくり、こっくりと舟を漕ぐ水色の麗人。
 どうやら自分が起きるのを待っていて、そして彼も眠ってしまったらしい。起こしてくれれば良かったのに…そう思うが、疲れている自分を労ってのことだろう。また、あの子に要らぬ気を使わせてしまった。申し訳ないと思いつつも、彼の優しさには何時も助けられ、そして癒されてきた。今度はこの子が望むことをさせてあげたい……とは思うのだがアフロディーテは望みを言わない。負担にはなりたくないから、だそうだ。我が儘の一つくらいで負担だなんて思わないし、恋人の我が儘は寧ろ可愛いことでなんてことないのに。
 そんなことを考えながら、サガはうつらうつらするアフロディーテの肩をそっと叩き軽く揺する。
「アフロディーテ起きなさい。」
「…んぅ……。」
「風邪を引いたら大変だ。今日はもう双魚宮に戻ると良い。」
 守護宮への帰還を促すが、当のアフロディーテは未だに覚醒には至らず。
「アフロディーテ。」
「んー……。」
 ゆっくりと傾くアフロディーテの身体。長椅子にくっつく前に抱き止めてやると、すうすうといった穏やかな寝息が耳に届く。
「…困った子だ。」
 この子もまた疲れていたのだろう。完全に眠ってしまったアフロディーテにサガは口許を綻ばせた。きっと次…否、明日起きた時に、失態し迷惑を掛けたと謝られるだろうか。しゅんとする魚座を想像してしまう。私にしか見せない、そうところがまた可愛いところなのだけれど。

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思いやる二人。何時もじゃないけどサガさんの前だとちょっと子どもっぽいアフロちゃんとか可愛い。

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