モンテカルロ 濡れた音が響く。息継ぎもままならないくらいに荒々しく、そして激しく咥内を犯される。歯列をなぞり、舌の根を擽り、ざらざらとした舌を擦り付けられる。慣れない彼の唾液の味。けれども不思議と不快ではなかった。 何度も何度も繰り返し行われる口付けに、アフロディーテはただその気持ち良さに酔いしれる。不意に離れていく相手との間に銀の糸。熱い吐息を吐き出したアフロディーテは目の前の碧色をぼんやりと見詰めていた。 「…どうした?」 「…ん、やっぱり似ているなと思ってね。」 あの人と同じ顔。双子なのだから同じで当たり前だ。しかし目の前の彼は何処と無く野生的で、あの人とはまた別の包容力を感じさせる。でも結局根本的なものは同じなのかもしれない。 けど目の前の双子の弟は唯一。双子座のカノンは、無二の存在である。 「こんな時にサガの話なんかするなよ。」 「…妬いたのかい?」 「別に。」 そんなつもりで言ったのではないのだけれど。逢瀬の時にまで此処に居ない双子の兄の事を言われるのは確かに嫌かもしれない。 拗ねるカノンの頭を謝罪の意を込めて、よしよしと幼子をあやす様に白皙の手のひらが撫でていく。マリンブルーの髪から少しだけ潮の香りがした。 「最近の海界はどう? あぁ、海魔女の彼も元気かい?」 「海界の様子は良いとして、サガの次はソレントか。」 「だからそういうつもりじゃな、」 言葉が途切れる。ベッドに押し倒されたアフロディーテは驚いた様にカノンを見た。ただ単に気になっただけだ。他意は無い。以前街で偶然出会って、それから今ソレントはどういう風に過ごしているのかと…。 しかしカノンの嫉妬を煽るには十分だったらしい。 「俺の事しか考えられなくしてやる。」 「カ、ノ…っ。」 再び重なる唇。先程よりも激しく咥内を蹂躙される。執拗に繰り返される行為にアフロディーテは息を乱す。変則的に舌を絡ませてくるせいで息継ぎのタイミングが掴めない。酸欠に喘ぎながら、アフロディーテは必死に目の前の碧色に追い縋った。 ―――――――――――― モンテカルロのカクテル言葉は「求愛」 |