AM7:26 夏場特有の熱い太陽の光に焼かれながら目を覚ます朝。シュラの腕枕で寝ていた筈なのだが、実際頭の下にあったのは彼が使っていた枕。自分を起こさない様に、しかも頭とベッドにわざわざ枕まで挟んでから、日課である早朝鍛練に向かったであろうシュラにアフロディーテは何を思っただろうか。 取り合えずベッドの上に身体を起こすと、解れてぼさぼさになったシアン色の髪が顔に掛かって煩わしい。何度か後ろに流すが余り意味が無いように思えた。 夏になる度に髪をばっさりと切ってみようか……と考えるのだが、結局は考えるだけ。切らなくても適当に纏めて縛れば良いだけの話だ。今日アフロディーテの予定は庭園の管理作業のみ。しかし聖闘士として、何かあっても良い様にはしておかねば為らない。寝起き特有のぼんやり感が拭えぬまま、アフロディーテは高い所で髪を纏めながら寝室を出る。 取り合えず腹が減ったので朝食を作ろうか…。冷蔵庫の中身を拝見していると、不意に背後から掛かる声。 「わっ、戻ってきたのならシャワーの前に一声かけたまえ。」 「此処は俺の宮だ。主たる俺が何故来訪者のお前に気を使わねばならん。」 「親しき仲にも礼儀ありと言っていたのは誰だったかな?」 「それを言うなら人の所の冷蔵庫を物色するな。」 「今更だな。」 舌戦の最中にもアフロディーテは冷蔵庫からトマトとモッツァレラを取り出しスライスしていく。その間に昨日シュラが作り置きしたコンソメスープを温め、食パンをトースターに入れてスイッチを押す。 「…で、なんだいそれ。」 トマトとモッツァレラを交互に重ね、オリーブオイルに塩コショウをしながらアフロディーテはシュラが飲んでいるものについて尋ねた。 「プロテイン入り野菜スムージー。」 飲むか?と勧められたので、プロテインを抜いた普通のスムージーを頂いた。普通に美味しい。 「…なんだかこれ、アイオリア辺りが飲んでそうだね。」 「ああ、アイオリアから教えて貰ったんだ。」 野菜とプロテインを両方楽に取れて良いのだと、最近は専らこれを作って飲んでいるらしい。 「…あの子はいい加減料理を覚える気は無いのか。」 「無い、だろうな…。」 後輩の食生活を案じる先輩二人。つくづく自分の相手がそれなりに料理が出来て良かったと、内心二人は互いにそう思っていた。 徐にシュラがアフロディーテの髪に触れながら口を開く。 「…髪。」 「髪? あぁ、暑いから上げただけだが?」 「下ろせ。」 「?なん……まさかっ!?」 光速で洗面台へ移動し鏡で首周りを確認する。そして再び光速でキッチンに戻るなり、アフロディーテはシュラの腹へ拳を繰り出す。が、武術に秀でた山羊座に敢え無く手首を掴まれて終わる。 「目立つ所に着けるなとあれだけ…!」 「虫避けになって良いだろう。」 「言い出しっぺの癖に、何を急に開き直っているのだ君はっ!」 反対の拳も振るうが結局こちらも掴まれて終わり。 「こ、の…!」 「朝から穏やかではないなアフロディーテ。」 「誰のせいだ馬鹿山羊!」 目を釣り上げて怒るアフロディーテにシュラはため息一つ。朝食を前に千日戦争なんて真っ平ごめんだ。 取り合えずピラニアと化した目の前の魚座を黙らせよう……シュラは透かさずアフロディーテの口に食らいついた。 ―――――――――――― 髪短くてもアフロちゃんなら似合うと思う← |