ネクタル

 グラスに注がれたのは赤い液体……神酒ネクタル。不老不死の神々が飲む神酒ネクタルの原料は不明であるが、実はぶどう酒ではないかという話を何処かで聞いた事がある。それに加え大変に美酒だとも記述されていたが、生憎と自分は腐れ縁の蟹座程酒には興味が無い。故にこれを飲んでみたいとは思わなかった。
 オリンポスの神々の中には酒の神がいることから、その推測は強ち間違って無いともとれる。が、これが合っているという可能性も無い。
 しかし幾ら己の中で思案しても、結局人の身である自分にはネクタルの凡ては分からないままである。仮に知り得たとして何にも為りはしない。意味が無いからだ。
「魚座。」
 ネクタルを煽る死を司る神は、何を思ったのか。自らも弟神と同じく連れ込む様になったアテナの聖闘士……アフロディーテを引き寄せ、神酒を頭に溢す。何にも形容し難い酒の香り。シアンの髪を赤い滴が滑り、その美しいかんばせに流れる様はまるで血の様。
 突然のことに茫然としているアフロディーテを更に己へと引き寄せ、自ら彼に溢したネクタルを舐め取っていく。
「貴様の様な人の子がこれを飲めば、永遠に我等神と共にあれるという。」
「…生憎と、私は頂いた人の命を全う出来れば十分なので。」
 そうアフロディーテが答えれば、タナトスはニヒルな笑みを浮かべる。
「神と共にありたいと言えば…可愛いものを…。」
「それは残念でしたね。」
「いや…もしお前がそう言えば、俺は此の場で貴様を八つ裂きにしていたのだぞ魚座。」
 さも、楽しそうに死を司る神はそう言った。未だに反抗的なアフロディーテの、想定内の回答に機嫌を良くしたタナトスは、新しくグラスに注いだネクタルを一気に飲み干した。

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お題・舐め取る

双子神誕大遅刻しましたがタナトス神誕生日おめでとうございました。
ネクタルについては色々調べたのですが、間違ってたらすみません…。

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