鶯茶 双魚宮のキッチンではアフロディーテが今晩の夕食を作っていた。冷蔵庫の中で中途半端に余っていた野菜を入れたコンソメスープに、最近作るのにはまっているというパンケーキがたくさん焼かれテーブルの皿に大きく山を作っていた。 「こんなに作って…全部食べきれるのか?」 「心配入らない。自分で作ったものは全部食べるさ。」 風呂から上がりたてのシュラが後ろから声を掛ける。教皇宮にて執務をこなし、午後からは兵達の訓練と演習指揮を執ってきた故にかなり腹が空いている様だ。存外空腹を訴える山羊は分かりやすい。 冷蔵庫から昨夜の飲み掛けの赤ワインをグラスに開け、炭酸が抜けてきているコーラを注ぎディアブロ・ブラッドを製作する。それを片手にパンケーキ……ではなく、その隣のサラダのトマトを摘まみ、レタスを引っ張り山羊はもぐもぐと無心に咀嚼をしていた。 摘まみやすいであろうパンケーキからシュラが手を引っ込めたのには理由がある。今朝はパンケーキから始まったということもあり、夕食もパンケーキというのは少し抵抗があるのかも知れない。しかしアフロディーテは分かっている。 「君はそうやってなんだかんだ言うが、結局は全て食べてくれるのだろう?」 シュラは此方が出した料理を残したことが無い。全て綺麗に平らげてくれるのだ。特に彼からの返答は無かったが、これがシュラの肯定だということもアフロディーテは知っている。図星を当てられるとシュラは耳が赤くなるのだ。 「…腹、減った。」 照れ隠しなのか、後ろから腕を回され抱き締められる。まだ耳は赤いまま。 「アフロディーテ腹減った。」 「はいはい、全く困った山羊だな君は。」 雛鳥の様に飯を早くと強請るシュラはアフロディーテの肩口でピーピー鳴いている。半乾きのクロムグリーンの髪が頬に当たって冷たくてそして擽ったい。 取り合えずデザートのトッピング用に切っていた苺を、山羊もとい雛鳥というには大きい男の口に押し込んでやった。 ―――――――――――― お題・餌付け 珍しく山羊が甘えてる。 |