シンガポールスリング

「…これで全部だな。」
「有難うアルデバラン助かったよ。」
 そう言ってアフロディーテに花が綻ぶ様に微笑まれたアルデバランは照れ臭そうに頬を掻いた。
 今日はアルデバランの誕生日である。黄金聖闘士恒例の誕生日パーティーの設営は勿論金牛宮だ。非番で手の空いている人間が進めていたのだが、流石にアフロディーテ一人では中々はかがいかず。少々難儀していたところに現れたのは、誕生日の主役たるアルデバランその人であった。
「主役の君に手伝って貰って済まなかったね。」
「いや。誕生日だから手伝わないというのは道理ではないだろう?」
「君らしいねアルデバラン。」
 困っているものがいれば手を貸す心優しき牡牛座は、自身の誕生日でもその精神は変わらず。アルデバランの協力もあって設営はあっという間に終わったのだ。
 ところ変わって双魚宮の庭園。誕生日パーティーは決まって夜からなので、それまでには時間はたっぷりあった。故にアフロディーテは先程のお礼も兼ねてアルデバランをアフタヌーンに誘ったのだ。太陽を受けて咲き誇る薔薇達に囲まれてお茶をするということ無いからか、何処と無く落ち着かない様子のアルデバランにアフロディーテは大丈夫だと、彼の大きな手を握った。
「…全くアフロディーテにはかなわんなぁ。」
「ふふ、歳上のお兄さんを見くびるなよ?」
 小さい頃もこうして大丈夫だよ、と手を握った時があったな…とアルデバランは思い出す。小心だった訳ではないが身体が大きいこともあり、その見た目のお陰か素直に感情を出せない時があった。身体が大きいのだからアルデバランは強い…なんて、同年達の前では無理をしていた時があった。
 そんなある時、年少組の面倒を見てくれたこの魚座にこうして手を握られた。大丈夫だよ、と。
「子どもながらに救われた気がしてな。」
「それは買い被り過ぎだ。私はただ君の手を握った…それだけだ。」
「たったそれだけなのだがなアフロディーテ。それが俺には確かに救いだったんだ。」
 あの時は有難う。そう言って牡牛座は人当たりの良い優しい笑顔を浮かべて、アフロディーテの手を握り返した。手のひらは太陽の如く、ただひたすら温かい。

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アルデバランお誕生日おめでとうぅぅぅ大好きです(キリッ)

シンガポールスリングは5月8日の誕生酒。特徴は「身を任せられる者を求めるロマンチスト」

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