チリアンパープル 人がまだ動き出す時では無い…そんな朝早い時間。窓辺からは柔らかい陽光が射し込み、シオンの萌黄色の豊かな髪を輝かす。昇り始めの日の光か、シオンか…或いはどちらもか。眩さに目を細めるアフロディーテにシオンは近くに寄れと手を招く。 「…この時間にお前が来るとは珍しい。」 「今日は直ぐ…あなた様をお祝いしたく参りました。」 朝一で摘んだであろう薔薇達は花束として包まれていた。瑞々しい花弁は清廉された紫色。差し出された花束を受け取ると魚座は教皇に傅き、頭を垂れる。 「お誕生日おめでとうございます。シオン様。」 花が綻ぶ様な笑みを浮かべ祝辞を述べるアフロディーテは、シオンの手を取りその甲へと口付ける。 「お前も酔狂よな。こんな爺を祝う為に朝早くから来るとは…。」 「…シオン様。」 「ふっ冗談だ。…感謝するぞアフロディーテ。」 「勿体無きお言葉。」 傅くアフロディーテをその場に立たせると、幼い時にしてやった様に彼の頭を撫でる。日に照されたアフロディーテのシアンの髪の毛は透き通っているかの様に綺麗だ。髪の毛をクンと引いて、顔を寄せると鼻筋に口付ける。続いて頬や額に何度もくれてやると、アフロディーテの瞳は気持ち良さげに伏せられた。 「ふ…可愛い魚め。」 「…わっ。」 伸びてきたシオンの両腕に絡めとられて抱きこまれる。突然の事にビクリと身体を跳ね上がらせながらも、アフロディーテも怖ず怖ずとシオンの背中に腕を回した。 「…アフロディーテよ。」 耳元に吹き込まれた言葉に、アフロディーテは困ったような表情をしていた。 「あ、朝から…ですか…?」 「お前に触れたい…嫌か?」 こういう言い方にアフロディーテは滅法弱い。それでも理性が我を効かせた様で、胸板に腕を突っぱねられる。 「…夜に、また参ります。」 この隙間程の距離、離れられる事が寂しく感じるのは歳を取ったからなのだろうか。 「…楽しみにしておこう。」 「失礼します。」 腕の拘束を解くとアフロディーテは逃げる様に私室を出て行った。 「…可愛い小僧よな…。」 魚座の残り香と、紫の薔薇の香気に暫し酔い知れよう。今日は忙しい日になる。 ―――――――――――― またしても遅刻ぅぅ…← シオン様お誕生日おめでとうございましたー! |