モンブラン

「お前、また完徹したな。」
 その言葉にヤマトは振り返ると任務帰りだろうか、タブレット端末と、回収したアラガミのコアが納められたケースを持ったフレイアの姿があった。
「随分早いんじゃない? まあフレイアにはコンゴウ一体なんて簡単な任務だったわね。」
「茶化すな。」
 端麗なフレイアの顔がずいっと近付く。勢いと美しさとで思わずヤマトは後ずさる。が、背中になにかが当たる感触……後ろは壁で逃げ場を失って仕舞う。
「ちょっと、近い、冗談なら止め…。」
 顔の直ぐ横でフレイアの手が壁を叩く。所謂壁ドンという状態だ。確かにされた人間が言う様にドキリとはしたが、それは目の前のフレイアの凄みの利いた表情によるものからだ。
「冗談なら…お前にこんな真似はせん。」
「…フレイア。」
「これでも心配しているんだ。ヤマトのこと。」
 突然の告白にヤマトの頬は熱を帯びる。仲間として言われたことは今までにもあった。しかし、こんな風に真っ直ぐにフレイアに面と向かって云われることなんて無かった。一瞬熱があるのじゃないか、頭でも打ったのではないかと訝るが、堅物で真面目なフレイアに限ってそれは無いだろう。そして真面目だから彼の気持ちはストレートに入ってくる。
「ふ、フレイア? フレイアの気持ちは分かったから、ね? そろそろ離れないと誰かに見られちゃうかも知れない、から…。」
 気恥ずかしさに思わず目を反らしたヤマトとは反対に、フレイアはじーっとヤマトに視線を向けたまま。
「なら、こっちに来い。」
「は? えっ? あっちょっとフレイア!」
 壁から手を離したフレイアに腕を掴まれずるずると引き摺られていく。ついさっきフレイアが降りてきた区画用エレベーターに入れられ、連れて来られたのはフレイアの自室。ソファに座らされ、作ることが趣味な色とりどりのケーキをローテーブルに並べられる。
「好きなもの喰べてろ。今コーヒーを入れてやる。」
「あ、りがと…。」
 しかしケーキは喉を通らず。
「…ねえ。」
「何故こうするのか……だろう?」
「…うん。」
 ケトルの様子を見るフレイアの表情は此方から見えない。
「純粋な、好意だ。」
「それって…。」
 好き、ということなのだろうか。
「嫌か。」
「いや…嫌ならこうして部屋来ないし、その前にきっと手出してると思うし……。」
「嫌か?」
「……嫌じゃない、です……。」
「そうか。」
 顔を真っ赤にさせたヤマトとは反対に、フレイアは先と変わらず。

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突然神が降臨した←


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