シガレット

 紫煙が燻る。星が散りばめられた紺碧の夜空に溶ける様に。
ここ最近は、通常任務は勿論のことクレイドルの任務も順調に事が運んでいる。そして今日の討伐任務も無事に終わったことに、リュウは安堵の思いを込めてタバコの煙ごと吐き出した。
「迎えのヘリ、他のチームも拾ってくるから遅れるってよ。」
「…了解。」
 吸い殻を携帯灰皿に押し込むとポケットに仕舞う。そしてすかさずタバコの箱を開ける。残りは二本か……と独り言を呟きその内の一本に手を伸ばす。
「吸いすぎじゃねぇの?」
 声の方へ振り向く前に最後の一本を取られた。
「おいシエル。」
「火ぃ貸してくれ。」
 そう言いながらシエルは銜えたタバコを、リュウが銜えるそれに近付けて息を軽く吹かしてから火を付ける。
「…お前も吸うんだな。」
 自分と同じく紫煙を燻らすシエルは、口の端にタバコを銜えニヤリと笑った。
「本当に極々たまーに、な。」
 アルコールを取る分には何も言わない癖に、タバコに関しては身体に悪いからと口煩く言われているのだと今度は少し困った様に笑いながらシエルは肩を竦ます。
「まあタバコなんて百害あって一利無しだから、アイツの言ってることは間違ってねぇんだけどよ。」
 トントン…とタバコを軽く叩く。地面に落ちた灰は刹那、見境が無くなった。
「だったら今日は何故吸ったんだ?」
 シエルに苦言を呈したであろうスカイブルーの彼女を頭の片隅に思い浮かべながら、リュウはシエルに疑問を投げ掛ける。
「どんなもんかと思ってよ。」
「何がだ?」
「お前が見てる世界ってやつ。」
 言わなくても解る筈だ。自分達は神を喰らうもので。最初から目指すべき世界は、未来は同じであると。
「なあシエル、お前って結構ロマンチストだよな。」
「はっ!何とでも言え。」
 タバコの火を靴底でもみ消しながらシエルの眼光は鋭く。ガーネットを思わせる瞳は遠く、星を写す。
「夢語りを…夢で終らせられっかよ。」
「…随分入れ込んでるんだな。彼女のこと。」
「残念ながら届いてねぇがな。」
 ――届けるつもりもない癖に。
 しかし、シエルや彼女が語る夢を現実にすることにはおおいに賛同しよう。そう。自分達の目指す方向は一緒なのだから。
「にしても、ヘリ遅ぇなぁ。」
 紺碧は既に漆黒に塗り替えられようとしていた。
「良い機会だ。」
「あ?」
「お前の理想ってやつ…詳しく聞かせてくれないか?」
「珍しいんじゃねぇの? お前が他人のこと聞きたがるなんてよ?」
「…他人じゃないだろ。」
 俺達は、仲間だ。

――――――――――――

八周年企画子犬様リクエストでシエルとリュウくんでした。
お、男の友情って難しい…。この二人なら黙ってても解るよ的な感じがします。
そしてシエルがヤマトを意識し過ぎな気がしますが、全ては惚れた弱み。元から彼は女々しい子(←)なのでね、問題はないかと←

リクエスト有難う御座いました! これからも宜しくお願いします!


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