イレギュラーに対する対策A 「イレギュラーよ。」 ヤマトが展開するユーバーセンスに映ったもの。紛れもないこれは感応種のものだ。 「こちらヤマト。輸送ルート上に感応種出現。識別を急いで、あとブラッド隊も回して頂戴。」 慌ただしくなる現場に、輸送車に乗っている難民達に次第に動揺が広がっていく。無理もない。常にアラガミに喰われるのではないかという恐怖を抱えながら、やっとサテライト拠点に移動出来ると希望を見出だしたばかりだ。なのに、またか死ぬのかと人々は絶望に覆われていく。 「ねえ…わたししんじゃうの?」 少女の言葉に難民達は誰一人答えを言う者はいなかった。 「死なないわ。」 彼女を除いて。 「神機使い(わたし)がいる限り、誰も、誰一人として死なせない。」 自分一人では、全ての人々を助けられない。だからこそ。自分は自分の手の届く範囲全てを護ると誓った。遠い、月に行った女神に。仲間に。そして自分自身に。 「"識別終わりました。感応種はマルドゥークです。今のところ近くに他のアラガミの反応はありません。"」 「ブラッド隊は?」 「"一番近くにいたアキラさんとナナさんが出撃しています。ですが何れだけ急いでも到着まで五分は掛かるかと…。"」 「了解よ。引き続きオペレートお願い。」 マルドゥークとはまだ距離が開いており、幸いこちらの動きは関知されていない。 「輸送車は此処から迂回してサテライト拠点を目指して。君達は輸送車の護衛を。」 「ヤマト先輩、本当に一人で感応種と…?」 クレイドルに所属する後輩が心配そうにヤマトを見つめていた。確かにヤマトはアリサやソーマと違い、アキラとマドカの血の力『喚起』によるブラッドアーツには目覚めていない。 「足止めするには十分よ。それに…此処でブラッドアーツに目覚めれたらラッキーよね。」 まあそんな上手くいかないんだけど、とヤマトは後輩達に笑ってみせた。 「さあ、あの人達を護ってあげて。ここは絶対に抜かせないわ。」 「…はい。ヤマト先輩。」 後輩達に難民達を任せヤマトは神機を手にマルドゥークのいる方向へ走り出す。 「"先輩無茶だけはしないで下さいよ!!"」 「アキラが早く来てくれたら無茶しないで済むかもね。」 「"もう!どうして先輩達はそう…アリサ先輩に告げ口しますよ?"」 「あ、止めて。アリサに言うのだけは勘弁して。」 冗談を交わしながらもマルドゥークとの距離はどんどん縮んでいく。心音が早くなる。 新調したヴァリアントサイズ・ペルセポネが太陽の光を反射する。蒼くきらりと輝いた閃光にマルドゥークが気付くと、獲物を見付けた魔狼は咆哮する。 アキラ達が来るまであと数分。輸送車の人々を護りきるまで……。 「何分だろうと、抜かせないわ。」 ―――――――――――― いい加減GER組にBAを考えたほうが良い気がする← ← |