長くて早くて短い今日

「お疲れ。」
 ヤマトは瞼をゆっくり持ち上げる。自分と同じく定期的に行われているメディカルチェックを受けていたシエルだ。自販機から飲み物を買い、その一つをヤマトに寄越す。
「…本当、お疲れさんな。」
「急にどうしたのよ?」
「こないだのことに決まってるだろ?」
 ああ、とヤマトはプルトップを開けながら、先日の一件を思い出す。
 リンドウが無事に帰還した後の……とある事件。第一部隊延いては第二・第三部隊…いや極東支部全ての叡智を結集して、見事ヤマトら第一部隊はアラガミを討伐したのだ。
「検査の結果は?」
「何処も異常無しよ。任務に出ても大丈夫ですって。」
「回復力も化け物並みかよ。」
「それは、あんたもでしょ?」
 シエルも同じ第一部隊だ。彼もまた化け物の一人。ただ彼の化け物足る所以は良くも悪くもしぶといというところか。
「ルカは?」
「今日有給取ってドイツに帰ったわ。暫く向こうでゆっくりするんだって。」
 もう一人の化け物であるルカは実家に帰省中だ。前から一度ドイツに帰って来いと両親に言われていたから丁度良い、と珍しく嬉々としながら輸送ヘリに乗り込んでいったのをヤマトは見ていた。
「シエルは帰らなくて良いの?」
「有給取らなくても任務帰りに寄れるからなー。」
「一度帰ってみたら?シゲユキおじさんとか弟くん達喜ぶと思うわよ?」
「そういうお前は?」
「私は研究区画に行けばいつでも会えるもの。」
「つーことは、お前もまだおじさんに会ってねぇな?」
 図星かヤマトは飲み物を噎せていた。
「ま、俺は別にどうでも良いが、お前は一度ちゃんとおじさんに会っとけよ。」
 言いたいことだけ言うとシエルはラボラトリ区画を出ていく。
 新型神機使いになって早数ヵ月。しかしこの数ヵ月は長くて早くて……短い数ヵ月だった。
 そして、これからもそんな長くて短い神機使いとしての日常を繰り返して行くのだろう。
「……会いに、行こうかな…。」
 今の時間なら休憩しているだろうか。父も自分と同じく時間の隙間を見付けては何かしている人だから、いないかも知れない。
「悩んでても仕方無いか。」
 空き缶をゴミ箱に投げ込むと、ヤマトはエレベーターに乗り込み研究区画へのボタンを押した。



GERクリア記念。


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