再誓のオラトリオ

「良いか。今日の任務は広域内に点在するアラガミの掃討だ。ツーマンセルで各個撃破していくぞ。」
 シエルはソーマと、ルカはコウタと。そして自分はリンドウと組んだ。

***

「おい、ヤマト。」
「…寝てない。」
「ほらね。」
 ヘッドホンから聞こえてくる仲間の声。そんなに長くはない筈だ。ヤマトとしては少し目を閉じていただけなのだが、シエルには寝たと思われたらしい。ルカはそんなことない、と笑っていた。
 間もなく本日の任務地に到着すると操縦士に告げられる。雑談で緩んでいた気持ちが引き締まる。次第に緊張してくる。
「ヤマト。」
 引きつった表情のままヤマトの丁度向かい側には、大股開いて座っていたシエルが彼女に話し掛ける。三白眼で目付きが悪いが、紅いガーネットを思わせるような瞳は仲間を気遣う色だ。
「リンドウみたいにとか、誰かみたいにって言うのは止めろ。お前はお前の信じるものの為に、思うままやれ。」
 不敵に笑うシエル。言葉は乱雑だが、返ってそれがシエルらしい。
「私には隊を率いたことがないので、ヤマトの気持ちは分かりかねますわ。でも、貴女は貴女のままでいて下さいな。」
 様はシエルと同じだとルカは品の良い笑みを浮かべていた。
「私らしく、か…。」
 しかし今までみたくはいかないだろう。部隊長ともなればそれ相応の責任が生まれる…ツバキの言葉はヤマトに重くのし掛かっている。
「様は今まで通りアラガミに突っ込んでっても良いんだよ。」
「ええ、後方支援は任せて下さいませ。」
「ちょっと!それじゃあ私が単細胞みたいじゃない!?」
「事実だろ?」
「シエルも負けてませんけどね。」
「あぁ!?」
 三人は無線が繋がっていることを忘れてぎゃいぎゃい騒ぐ。操縦士は困惑しつつも、三人の喧嘩?を微笑ましく思っていた。しかしこの騒ぎもツバキの一喝によって幕を閉じる。

***

「狸寝入りか?」
「だから寝てないってば。」
「ふふふ。」
 懐かしい思い出。少し前の出来事だが忙殺故に忘れかけていた出来事の一つ。閉じていたセルリアンブルーの瞳は、あの時の様に迷いも曇りもない。澄んだ蒼穹の如く。生命力溢れる目をしていた。
 ヤマトの向かい側に座るシエルも、ヤマトの隣に座るルカも同じだ。
 たった数ヵ月の出来事は少年少女を此処まで大きくするか。あの日と同じ操縦士は三人の神機使いに目を細める。
 ヘリコプターから降りると、ヤマトは神機を担ぎ二人へと振り返る。
「準備オーケー?」
「おう。」
「何時でも行けますわ。」
 本日の任務は広域内に点在するアラガミの掃討。ツーマンセルを敷けるほど神機使いはいない。しかし"今"の三人には、この三人で十分だ。
「行くわよ!!」


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