バラード

 部屋中に響くこの歌はバラードだろうか。ローテンポで女性のアーティストの声が良く通っていて、それでいて英語で何を言っているか分からないが、曲調からして多分悲しい内容の歌?
旧時代の音楽を湯水のように垂れ流しの状態で聞いているセッカは、シエルの姿を横目で確認すると彼に聞こえる様に態と大きく舌打ちをした。
「…何の用だ。」
「これなんて曲だ?」
「人の話を聞け。」
セッカの問い掛けにマイペースな答えを返すシエル。少しだけ古臭いコンポのディスプレイに表示されていたアーティストの名前を見るも、結局分からなかった。何時ものようにソファー座るセッカの隣にどっかりとシエルが座った。
「歌詞はなんて?」
「…さあな。」
母国の言葉で紡ぐ歌だ。意味なんて嫌でも理解している。曲は好きだが歌詞の内容は嫌いだ。だってこれは別れを惜しんで、旅立つ我が子への思いを歌っている歌だから。
「そうだ。これからサリエル狩りに行くんだけどよ?」
「…どうせもう申請してあるんだろ?」
「あぁ。」
「…そんな事だろうと思った。全く…お前が来るとおちおち寝てられん。」
うんざりした様子だったが、腹を決めた様にセッカは立ち上がると音楽を止めた。


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