晴嵐

ヤマト+シエル+ルゼル


 ルゼルは口に銜えたタバコの煙を吸い込む。吐き出された紫煙が一気に広がり、しかしそれは直ぐに消えていく。ヤマトがタバコの煙を嗅いで咳き込んでいるが、お構い無しにルゼルはタバコを飲む。
「お前らなあ…。」
 いつも温厚なルゼルが今日は怒っている。理由は勿論神機についてだ。
「漸くメンテナンスに来たと思ったら、思っていた以上にどこもかしこもガタガタじゃねぇかよ。」
「…忙しくて…ねえ?」
「あぁ…ここ数日間は討伐任務が多くてよ…。」
「だから持ってこいって言ってんだよ。」
 神機はアラガミを斬る剣。それと同時に神機は己を守る盾でもある。前にリッカに怒られた時と同じ言葉だった。何度も繰り返される言葉には神機整備士として働く彼らの願いが込められている。
「半端なことしてっと死ぬ……分かんだろ?」
「…ごめんなさい。」
 藍色の髪の毛がサラサラと落ちる。頭を下げるヤマトの横に立つシエルは、ばつが悪そうにしていた。
「次からはちゃんと来い。」
「なるべく努力…します。」
「あぁ。」
 携帯灰皿にタバコを落とし込むと、ルゼルは二人の神機のメンテナンスを始める為にターミナルの前に立つ。
「どれぐらい掛かりそうだ?」
「こんだけガタついてるのが二つだからな…フルメンテナンス並に掛かるぞ。」
 シエルの神機もそうだが、特にヤマトの神機のほうが深刻らしい。
思えばハンニバルとの緒戦で部品を入れ換えてからロクにメンテナンスに出していなかった…という爆弾発言にルゼルは無言の圧力を出す。
「…ヤマト有給出しとけよ。」
「えぇ!?それじゃ暫く任務に出られないじゃない!?」
「ここまで酷使しといて良く言うな?あぁ?」
「す、すみませんでした…。」
「シエル、お前も有給出しとけ。」
「…………。」
「掘られてぇか?」
「フルメンテナンス宜しくお願いします!」
 怒っていてもやはりルゼルはルゼルだった。


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