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遠目に見ても重傷だ。なので走っていって確認すると、本当に情けないくらい傷だらけだった。今日は彼は殴られたのだろうか、蹴られたのだろうか。局長はこっちを見て、少し恥ずかしそうに笑った。この人はバカだ。


「また…」
「ちょっ!痛いマジで痛いから!!」
「そんならこんなになるまでストーカーしに行かないでくださいよ」
「それが俺の愛だ」
「医務室!」
「いいってホント!俺自然治癒力半端無いから!大丈夫だって!」



まいどの事のようにボロボロになって帰ってきた局長を始めに見つけたのは、見回りが終わり屯所の門の前にいたこの私であった。運のいいことにちょうど通行人は居なかったが、局長は頻繁すぎる位の頻度で出掛けては殴られているので、これまでに目撃者が居ない訳もない。痛がる局長をある程度気遣いながら引っ張って、屯所内へとずんずん進んでいく。


「いい加減懲りてくださいよ、局長…」
「いんや、俺の愛が尽きるまでは続けるからな。ははは!よって終わらない!」
「…ふんっ」
「ちょ!!いたったたた!歩くの早いって!」


誇らしげに胸を張る姿がむかついたので、腕を引っ張りもっと早く歩く。今日ぐらいはおとなしく治療されるがいい、と医務室に放り込んでから急いで副長を呼びに行く。こんな自分を家族にしてくれた、優しいこの人が報われる日がいち早く来ることを願うのは、俺だけではないはず。


「局長がまたボロボロで帰ってきました」
「……ああ、今行く」
「なんか、めっちゃ幸せそうでした」
「…だろうな」

副長が見せる呆れ顔も、大概だ。


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