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もういやだ。なんだってんだよ俺が何したよ。平素から善い行いしかしてきてないよ馬鹿。誰に言ってんだ。むしゃくしゃすると架空の相手に語りかけちまうらしい。これだから、隊長と見回りなんて行きたくなかった。今では遅い後悔が全身をぐるっと包む。


「金が…ううう…」



効果音を付けるなら、ずーんどよーん。こういう時、女だって言っちゃってたなら楽だったのか?いや、きっと沖田隊長にそんなもんは関係無いのだろうな。なんてことを考えて、また疲労感が増した気がした。もう隊長は、存在自体がパワハラだ。だから俺が癒しを求めるのも当然といえば当然である。女の子が恋しい、俺いや私は、女の子や短絡的に言えば可愛いものが好きなのだ。しかしここは男所帯で、癒しなんてもんは皆無。


「ザキさん恵んで」
「ごめんね」
「早っ…唯一の希望があっさりと……」
「君も大変だね」
「ふん!ザキさんの人で無し!クソ!地味!」
「ちょ、八つ当たりしないでよ!俺のラケット!」



いつの間にやら培われた馬鹿力でいっそ折ってしまおうかとも思ったが、力を込める直前になんだかふっと体中の気合いが抜けて、破壊行為は取りやめになる。空しい。ザキさんは安心したように息を吐いた後、俺の顔からより上の方に視線をずらした。心なしか顔色が悪い。



「よォ、楽しそうじゃねえか。仕事はどうした、仕事は」


ザキさんの顔は海より青い。


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