dannsou | ナノ





「あのっ、これ良かったら!」
「へ?」
「食べてください!」
「え、良いんですか?」
「はい!あ…それで、その…」
「なんでしょう?」


本日も晴天なり。平和な町内を土方…いや、副長と見回り中、肩を叩かれ振り向いてみれば、かわいらしい女の子が俺にぐいっと包みを差し出している。毒とか入ってんじゃね?ひがみか何だか知らないけれど、耳元で失礼な事を囁く副長を軽く後ろに肘で押し退けて、彼女に笑顔を向けた。



「か、彼女とか……」
「いないですよ」


当たり前じゃないですかと微笑んでやると、あっという間に朱に染まる頬。初々しいねえ、かわいいかわいい。こんな風に女の子と話していると、


「あ、どうです?団子でも食べに行きま痛ァ!」


脳天にズドンと落ちてきた拳の威力は凄まじい。ちろりとななめ上を見上げれば、副長が見回り中だろ!と言って怒鳴ってきやがった。半分は妬みやひがみも含めての拳固だな、きっと。仕方なく女の子にすみませんと手を振り帰ってもらう。すぐさまパトカーに乗り込み、包みを開けようとすると副長も運転席に素早く腰掛け扉を閉めた。



「バカかテメーは!何受け取ってやがんだ」
「はぁ…」
「んでもって茶に誘ったのはどういう了見だ?あ?」
「いやあ、可愛かったんで、つい」
「なあ、余程たたっ斬られたいみたいだな」
「すいません、……でも俺けっこーモテるんで」
「んな事ァ聞いてねェんだよ!!」




俺は、私は、女だということ。これは局長と副長しか知らない秘密事項なのです。ちなみに、たまに自分でも忘れそうになる。


- ナノ -