5「名前大変」


「な、え?なに、これ、ええ??」

田んぼが広がる田舎道のど真ん中に、3メートルくらいはあるだろうか、とにかくばかでかい、狼が居た。
真っ黒で、眼が紅い。キバがむき出しで、ヨダレがビチャビチャ垂れている。見るからに獰猛!
なんでこんなのが通学路にいるんだよ!ていうか、ええ??何コイツほんとに!

「み、峰ちゃん、なにこれ…」

「ウルピィか…とうとう村の中にまで……!」

ウルピィ!?名称カッワイイ!ってそうじゃなくて何かやばくない!?村の中にまで、って今まで村の外には居たの!?どこよ!?山とか!?それどこ情報!?

「えっえっていうか峰ちゃんやばくない!?逃げよう!」
「馬鹿、逃げてどうすんだ!」

勢いよく逃げ出そうとした俺の襟首を峰ちゃんが捕まえる。
ちょっと峰ちゃん!?正気なのあんた!

「仲間を呼ばれたら厄介だ…お前も戦闘準備しろ!!」

「えっえっどうしちゃったの峰ちゃん!!いやマジで!!」

峰ちゃんが通学鞄をガサガサしだして、俺がひたすらワタワタしていたその時。
ウルピィとかいう、名前負け?いやこの場合勝ちすぎ?よくわかんないけど名前からは想像出来ないくらいのドデカイ狼が、ダラダラよだれを垂らしながら俺達の方へ突進して来た。
っていうか、俺!峰ちゃんでなく、弱腰の俺の方に突進して来た!

「家良!!!避けろ!!!」

峰ちゃんが叫ぶ。
けど、避けれるわけないじゃんばか!!
俺はとっさに目を閉じた。
ああ俺、こんなとこで死んじゃうんだ…その時、

キィイイン!

耳をつんざくような金属音がした。




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