友達
「はい、コーラ…」
くっそ身体痛ぇ…泣きすぎて頭も痛い。
それなのにきちんと村上にコーラを出してやる俺は良い奴だ。
「サンキュ!でさ、お前あの後どうなったの?3階から飛び降りたっきり、ゲボッ…いくら探しても見つかんねーし、午前中ずっと小澤君大泣きしてたぞ…」
コーラを一口飲んではゲップするという不躾極まりない一連の動作を繰り返しながらの村上の説明によると(ゲップについてツッコむ気力は無かったから無視した)
村上と小澤君は午前の授業を全てサボって俺を探してくれていたらしい。
2人の優しさに胸を打たれて泣きそうになったが、合間合間のゲップが胸を冷ましてくれて涙は堪える事が出来た。
ただ、2人が必死で俺を探してくれている間、俺は悪戯に生き埋めにされていたんだと思うとやっぱり泣きそうになった。
「…なんか、心配かけてゴメンな。とりあえず、この通り俺は元気だから」
「おー、とりあえず大した怪我もなさそうで安心した。後で小澤君に連絡しといてやれよ、とりあえず小澤君今部活行ってるけど、なんかややこしい感じになってたからさ、ゲッボォ」
そうだな、小澤君に連絡しなきゃな…って、ややこしい感じ…?
「僕は河合君の事絶対に忘れない。夏のコンクールで賞を取る約束、絶対果たしてみせるね…ありがとう…さようなら…短い間だったけど、僕らはたしゲブォ、…僕らは確かに友達だった…的な事言ってたから、お前死んだ事にされてるぞ」
…お…小澤君…
「…すぐ連絡するわ」
「そうしろ、なんか昼休みに野呂井が小澤君に会いに来ててさ、詳しい話はわかんねーけど、なんか黒葬式?しようとか言ってたし、なんかヤバくね?あとコーラおかわり」
お、小澤ぁああ!!??
黒葬式って何だ小澤!!!
ちょ、コーラのおかわりとかどうでもいいわ村上のハゲ!
とにかく小澤!!!
「ちょ、今すぐ連絡する!!」
いち早く小澤君に連絡すべく携帯を開いた…筈だったのに、俺は無意識に新着メールを確認してた。
…意識的にかもしれない。
わざわざ、センターに問い合わせてまで確認したんだから。
"新着メールはありません"
「…当たり前か」
自分で、返事はいらないと書いた。
本当にいらないと思ったし、ここ二日間悪戯に振り回されて、本当に不快だった。
なのにどうして、俺は今更、あの変態の動向を気にしてるんだ。
何をショックを受けているんだ。
「悪戯なんかじゃない」
って言葉を、どっかで期待して。
…視界が、歪む。
あ、また泣きそうだ
「…河合?」
涙が零れた。
一粒零れたら、どんどん溢れて
「…河合」
静かな村上の声に、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げた。
村上も複雑な顔をしてた。
なんでお前までそんな顔。
村上はそんな顔、しなくていいんだ。
「むら、かみ…」
「河合…泣くのはいいけどコーラおかわりくれよ…」
ち…
ちくしょおおそっちかよおおお!!
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