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「い、いやいやいやいや、ちょ、ちょっと待って下さいすみません…!」

さすがにこれは俺も聞き流せない。
…聞き流したが最後、どんどんややこしい事になってしまうだろう事は目に見えている。
それは、それだけはごめんだ!

「隊長、あの、何か勘違いをしていらっしゃる様で…おおお俺、本当に申し上げにくいんですが、俺アレなんです、あの、隊長の事別に好きじゃない、あっいや好きですけど、恋愛感情で好きな訳ではないと言う意味で…!」

まあ…恋愛感情抜きでも別に好きじゃないけども…!

さすがにそれは言えない俺。
とにかく、なるべく隊長を刺激しないように話したつもりだったのだけれど…隊長はどんどん表情を曇らせてゆく。
「僕の事…好きじゃない……?」

声を震わせながら、隊長が問い掛けてきた。
その姿にズキンと胸が痛む。
俺本当に何もしてないのにすごく悪い事をしたような気分だ…
だけど、ここで引く訳にはいかない。

「あの…本当にごめんなさ「てめえええやっぱり麗緒様の事が好きなんじゃねえか!よくも僕をたぶらかしてくれやがったなこの鼻クソ野郎が!鼻クソの死骸が!耳クソの化石が!!」」

あああああいきなりすっげえ怒ったー!やっぱ口悪い!耳クソの化石って何だよ気持ち悪い…ってかそれよりも、何で俺隊長か変態のどっちかを好きって事になってんだよ!え!?どっちか選ばなきゃいけないの!?
どんな二者択一論掲げてくれてんだよ!地獄の何丁目だここ!

どう説明すれば、俺の潔白を証明出来るんだろうか…
言葉に詰まっていると、隊長に乱暴に胸倉を掴まれる。

「おい黙ってんじゃねーぞどういうつもりだてめぇコラ?さっさと言わねーと耳の穴から指突っ込んで卒業まで突っ込んだままにしてやんぞ!その頃には僕の爪も伸びきって、てめぇの鼓膜突き破ってんだろうなコラ!」

あああ怖い、もう何かツッコミ所が多過ぎて色々すげえ怖い!てかそれ俺だけじゃなくてあんたにとってもかなり辛いだろ!

「あの、隊長、落ちついて下さい…!」
「は?落ち着いてんだけど!産まれた時からずっと落ち着いてんだけど!産声すらすごい落ち着いてて助産師ビビらせたんだけど!」

隊長がガクガクと俺を揺さぶりながら言う。
どう考えても落ち着いていらっしゃらないしわけわからん嘘ついてる!

「あああ、すみません、あの、とりあえず、手を離してくださ…うおっ」

言い切る前に、胸倉を掴んでいた手が急に離される。
揺さぶられていた反動で転びそうになったけれど、壁に手をついて何とか堪える。
隊長を見ると、隊長は拳を握りしめながら大きな目にいっぱいの涙を浮かべ…俺を睨みつけていた。

「たい、ちょ…」
「出てけよ!もう…顔も見たくない!ばか!あほ!」

同時にワッと声を上げて、子供みたいに泣きじゃくり始めた隊長。
何なんだよ…ずきずきと胸が痛む。


なんとか…しなきゃ…


とは思ったけど、とりあえず色々限界だった俺は静かに部屋を出たのだった。


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