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「鍵一人で取りに行かせちゃってごめんね、もっと早く来れる筈だったんだけど、ちょっとドタバタしちゃって…」

小澤君は困ったように笑いながら、悪戯っ子の様にペロッと舌を出して自分の拳で自分の頭を軽く小突く。

えええ、これは小澤君でもちょっとキツイものがある…いや、女子でもキツイだろなあ…なんてボンヤリ考えていると、小澤君が焦ったように目を大きく見開いた。

「お、怒ってる?ホントに遅れちゃってごめん、ごめんね…」

どうやら何も言わない俺が遅刻に対して怒っていると勘違いしたらしい。ボーッとしてただけなんだけどなあ。

「全然気にしてないよ」
「本当に?良かったあ…急に黙っちゃったから、怒ってるのかと思った、へへ」

安心させようと笑って言うと、途端に笑顔になった小澤君は、やっぱり可愛い。うーん、皆のアイドルというのも頷けるなあ。

「ごめんね、ちょっと考え事してただけだから」
「あはは、何考えてたのー?」
「えっ?えーっと…」

まさか『舌をペロッとしながら頭をポカッとするしぐさは流石の小澤君でも痛いなあと思ってました』なんて言える筈も無く、言葉に詰まってしまう。

…さてどうしよう。
「カレー食べたいなって考えてた〜」とか軽く流す感じで良いかないやカレーはちょっとベタすぎて嘘っぽすぎるかいやでもそれくらいしかないなってそんな事考えてる間に完全にカレーのタイミング失いましたねちっくしょ〜はい!それどころか「何でもないよ」のタイミングも失いました!
これこんだけ沈黙した後に「カレーが」とか「何でもないよ」とか言ったら明らかに変な空気になるわ!馬鹿!俺の馬鹿!

そして俺は機転が効かない馬鹿なだけでなく、感情が顔に出やすい人間でもあったらしい。あからさまに困った顔をしてしまった。
それを見た小澤君が一気にシュンとする。



「あ、ゴメン…僕、図々しかったよね…」







あああ〜ほら変な空気になっちゃったよ!
沈黙後の「何でもないよ」と沈黙中の困った顔は同等の、いやそれ以上の効力を持つよ!
違うんだよ、ホントに。
違うんだって。
小澤君悪くないよ!どっちかっつーと俺が悪いよいや全面的に俺が悪いよマジで!

これはどうにかしなきゃと思って出た言葉が


「べ、別に…」


沢尻エ○カか!弱気な沢○エリカか俺は!!


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