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シンと静まった教室。
俺は、円の中心で深呼吸をした。

出来る、出来る、俺なら出来る。

目を閉じて、成功のイメージを思い浮かべる。
…成功も何も二回転のイメージがイマイチ頭に浮かばなかったが、無理矢理脳内では成功した事にした。

そして、確信する。





……これ、無理!





うん、どう考えても無理だ。
脳内ですらあやふやな事が実際に出来るわけがない。
縄跳びの二重跳びぐらいならイメージがあやふやでも何とかなりそうな気がせんでもないが、これは無理だ。
何だか出来そうな気がしてた自分がマジで恥ずかしいレベルで無理だ。

…俺はもう諦める事にした。
文句を言われても良い。
だがうじ虫キングだけは避けたい。
こうなったら、とりあえず皆に俺の話を聞いて貰おう。
っていうかだんだん腹が立ってきた。
何で俺が、あの変態ナルシストのせいで、こんな目に合わなくちゃならないんだ。


「皆、聞いて欲しい!」


俺が大声を出すと、静かだった教室内が少しざわめく。
俺はそんな事気にせずに、言葉を続けた。

「正直に言うけれど、俺はバク宙二回転なんて出来ない!っていうかバク宙すら出来ない!!!」

急に開き直った俺に、クラスメイト達から避難の声が上がる。

「やっぱり出来ないんじゃねーか!このうじ虫キング!」
「ふざけんなよ、馬鹿にすんな!」
「河合ごめんなマジで!」

やっべ、めっちゃ怒ってるよ!
ていうかうじ虫キング定着しかかってる!これはマズイ!っていうか村上どさくさで今謝んな!失せろ!

「で、出来ないけど!!チャレンジはしてみようと思う!でもどう考えても二回転は無理だから、普通のバク宙にしてほしい!そんで、もしそれすら出来なかったとしても、うじ虫キングだけは止めて欲しい。虫キングくらいにしてほしい!」

自分でも目茶苦茶言ってる事は解ってる。
でもこれ以外どうしようもないんだマジで!
ていうかこれでもめっちゃくちゃ妥協しました!

クラスメイト達は皆戸惑っているようで、嫌な空気が教室内を包む。
もうなんか色々最悪なその時だった。

もっと、最悪な事が起こったのは。





「総一君!!」





俺を呼ぶ声とともに、ガラリと教室の扉が開かれる。
俺を含めクラスメイト全員の視線が扉の方へ向いた。

…そこには、二度と会いたくないと思った変態…



そう、成瀬麗緒が立っていた。


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