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憂鬱な気分で教室へ向かう。

まだ登校するには早い時間だから教室の鍵は開いていないだろうけど、職員室に行っておそらく教師だったと思われるさっきの男の人と顔を合わせるのだけはごめんだ。
日直が来るまで前で待ってよう。

そんな事を考えながら静まり返った廊下を歩いていると教室が見えてきて、誰も居ないだろうと踏んでいた教室の扉の前に、人影を見付けた。
一瞬変人じゃなかろうなと身体を強張らせたが、すぐに杞憂だったと気付く。
良く見てみると、人影の正体はなんと村上だった。

「村上!」

「うおおっ」

駆け寄って声をかけると、今度は村上がビクッと身体を強張らせる。
な、なんだよそんなにビックリする事ないだろ…

「なんだ河合か。って河合お前っ!」

村上がのろい君ばりに目を見開いて俺の名前を呼んだかと思えば、両肩を思い切り掴んで揺さぶってきた。
い、痛ぇよやめろよ!
…そんな文句を言う隙間を与えず、村上が声を張り上げた。

「おまっ昨日のあれはどういうことだあれは!あれか、お前、なんかあれか、そういうことなのか!?だとしたら俺ビックリだわ!」

「ちょ、あれそれが多すぎてわかんねえよちゃんと話せよ!」

「わかれよ!昨日のあれはどういうことだって聞いてんだろ馬鹿っ」

朝っぱらから馬鹿扱い!?
ていうか昨日俺の訴えを信じなかったお前も悪いだろ!
とは思いつつも、面倒に巻き込んでしまった事に違いは無いわけで。
…ここは俺が大人になるべきか。

「や、だからさ、昨日言ったろ。手紙の差出人は成瀬本人だったって。なんか俺もマジで意味わかんないんだけどさ、好かれちゃったみたいで」

「…ちょ、マジかよ。あの成瀬先輩が…ありえねー…いや、ありえな……ありえなポンだな…」

ありえなポンて何だよ面倒臭いな突っ込まねえぞ!

「…俺もありえねーとは思うけどさ」
「ありえなポンな」
「しつけえ!面倒くせえから無視したのにしつけえ!いまそういうつまんねー冗談言ってる状況じゃねえから!」

「…良かった。いつもの河合だな。」

「は?」

…村上の顔を見ると、いつもの村上からは想像出来ないくらい、真面目な顔をしていた。

「な、なんだよ」

「あー、俺さ、お前の事、そこそこ大事に思ってるから。俺に出来る事なら何でもやってやる。これから頑張れよ。」

村上の手が、俺の頭をわしわしと撫でた。
意味がわからない。なんだよ急にどうしちゃったんだよ。お前そんなキャラじゃないだろ。

…そう思いつつ、なんでか涙が出そうになった。
変人に追い回され、親衛隊長に睨まれ、教師に恥ずかしい所を見られ、そんな俺でも、こんな風に言ってくれるいい友達が居るんだ。

「村上…!」

「河合…とりあえず今日な、靴箱開けるなよ。さっき成瀬先輩の親衛隊達がお前の靴箱パンパンにうんこ詰め込んでる所に遭遇したから」

ええええええぇえええええ!!
え、っていうか、えっ!?うんこ!?

「まぁ安心しろ、とりあえず見過ごしてすぐ風紀委員に報告しようと思ったんだけどさ、そん中にビックリするぐれえ好みの子が居てさ…なんとその子の手にうんこがちょっと付いちゃったみたいで、ヤダー!きたなーい!さいあくー!とか言ってっから、とりあえずハンカチ差し出しといたぜ。俺マジ紳士だなって思うわ。風紀には後で報告しとくわ」



む、村上てめぇえええええ!
何も安心できねぇわ!!つーか、もう、


えええええええええええ…


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