親衛隊


404号室を出て、自室に急ぐ。
とにかく、変人から逃げなきゃならない。これ以上付き纏われるのはごめんだ。

自室にまた変人が居たらどうしよう、と思いつつ部屋に戻ったが、中には誰も居なかった。
ホッと胸を撫で下ろしたが、良く考えたらここは俺の部屋なのだから誰も居なくて当然だ。

「ああでも、のんびりしてると変人が来るかもしれない…!」

時計を見ると6時を過ぎた所だった。のろい君の部屋では気付かなかったけど、外は明るくなってきている。
"朝一番"が何時なのか解らないが、変人の事だからマジでそろそろ行動を開始しているかもしれない。

「…もう行こう!」

早すぎるとは解っているが、俺は学校へ向かう事にした。
結局どこに居ても不安なのだから、学校が一番安全な気がした。
昨日から制服、上履きのままで風呂にも入ってないけどもうそれは仕方ない。
鞄を手に取り、そのまま部屋を出た。

………

急ぎ足で寮を出て、学園の門をくぐった。誰も居ない朝の学校って、不思議だ。
何だか変な感じがする。いつもはあんなに騒がしいのに、まるで嵐の前みたいな静けさだ。

ほんとに嵐が来たりして…

なんて、ふざけた事を考えて一人で笑う。その時だった。

「ちょっと、そこのあんた」

後ろから突然声をかけられて、びっくりして振り向くと、そこには美少女が立っていた。
ほのかにピンク色がかかった綺麗な赤茶色の髪を肩まで伸ばし、女の子らしく毛先を軽く内巻きにしている。
透き通るような白い肌に、薄く化粧を施した意思の強そうな瞳、小さな口元。
完全に好みだ。女の子らしいのにちょっと気の強そうな所がめちゃくちゃ魅力的だ。
あああ、嵐じゃなくて美少女が現れた!神様は解っていらっしゃる!不幸が続けば良い事もあるもんだ!

「てめぇ何見てんだよ。で、あんた河合総一?」

口悪っ!!呼ばれたら見るに決まってるだろ!いやでも可愛い!って、ていうか今俺の名前を…!?
「あ、は、はい、河合総一です…が!」

…緊張しすぎて挙動不審になってしまった。でも女の子と話すのなんて久しぶりだから仕方ない。
こんな男子校に閉じ込められて、果ては変人に追い回されたりしているんだからほんと仕方ない。

って、え?なんでこんな全寮制男子校に、こんな美少女が…?

「…チッ。なんでこんな冴えねー奴が麗緒様に…」

れ、麗緒様って、まさか、

良く見ると、美少女は俺と同じ制服を身につけている。
……お、

「男…!?」
「あぁ!?どっからどー見ても男だろうがクソが!僕は2年C組、雷風寺 嵐(らいふうじ あらし)成瀬麗緒様の親衛隊隊長だ!」

うおおお男だった親衛隊だった!つーか、



嵐だったーーー!!!


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